社説

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 森林の3割を占める国有林は私たちの大切な水源だ。土砂災害防止などの公益的機能を果たす国民の共有財産である。そうした国有林を民間業者が最長50年、大規模伐採できるようにする国有林野管理経営法改正案が国会で審議されている。

 政府は林業の成長産業化を掲げ、2020年4月施行を目指すが、疑問点が少なくない。

 何より伐採後の森林再生が義務化されていないのは、欠陥と言わざるを得ない。地域の森を守る中小の木材関連業者の淘汰(とうた)を懸念する声も上がる。

 企業の視点に偏っており、国有林が荒廃すれば、大規模な災害を招く恐れも否めない。国有林本来のあり方に立ち返り、慎重に審議すべきだ。

 多くの専門家が危惧するのが、対象となる森林の木を全て切る皆伐の大規模化だ。森林は表土に水と栄養を蓄え、流域に供給する役割を担っている。大規模な皆伐はその働きを奪う。そして、一度はげ山になればすぐには森林に戻せない。

 皆伐後の森林再生には植林、草刈り、獣害対策など地道な作業が要る。数百ヘクタールもの大規模皆伐後に森林を再生することは非常に困難だ。このため、下流域では長期間、山腹崩壊や洪水などの水害と水不足の両方の不安を抱えることになる。

 国有林の払い下げとも批判される制度は、安倍政権の成長戦略を議論する昨年5月の「未来投資会議」で提案された。驚くのは、国民の暮らしの基盤となっている森林の水資源保全力や防災機能について全く言及されていないことだ。

 日本は近年、気候変動で豪雨災害が多発している。地球温暖化の観点からも海外でも問題視される大規模伐採を、なぜ風水害が多い日本の森林に持ち込むのか。理解に苦しむ。

 企業が伐採の利益を得る一方、災害などの不利益は地元や未来の世代が被る。地域から安全・安心と資源を奪う制度を強引に導入すべきではない。

 森林伐採によるはげ山と災害の歴史は、江戸時代から明治、昭和まで人口増加などに伴って六甲山系などで繰り返されてきた。緑豊かな森林は、先人が重ねた苦難の上にあることを忘れてはならない。

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