社説

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 取り調べの録音・録画(可視化)を捜査機関に義務付ける、改正刑事訴訟法が施行された。裁判員裁判で審理される殺人などの重大事件と、検察が独自捜査する事件が対象となる。

 冤罪(えんざい)の多くは、捜査員による威圧や誘導など密室での違法な取り調べから起きた。そのことへの重い反省から生まれた制度だ。検察では2006年から、警察でも08年から試行され、大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件をきっかけに義務化へとつながった。

 刑事司法改革の大きな一歩ではあるが、課題は山積する。取り調べを適正化して冤罪を二度と生まないという出発点に立ち返り、制度の見直しを重ねていくことが重要だ。

 まず、極めて限定されている対象事件の拡大を急がねばならない。

 可視化の対象は、現状では全事件の3%程度にすぎない。日本弁護士連合会は、これまでの多くの冤罪事件が改正法では対象外となるなど、不十分さを指摘している。

 とりわけ、知的障害のある人や外国人など、供述が誘導されやすい、いわゆる供述弱者とされる人々への拡大は優先的に取り組むべきだ。

 逮捕される前の任意段階や、参考人の聴取が対象外であることも見過ごせない。日本では、任意でも事実上強制的に拘束して長時間取り調べる例が後を絶たない。うその自白を生む不当な捜査を抑制するために、対象拡大は不可欠といえる。

 取り調べ映像の取り扱いも議論が欠かせない。改正法は、裁判で供述の任意性が争われた場合、検察からの提出を義務付けたが、そのほかにルールはない。検察は犯罪事実の証明に積極活用する姿勢を見せており、自白頼みの捜査を改めるという可視化の目的を損ないかねない。乱用を防ぐためのルールづくりに取り組む必要がある。

 欧米やアジアでは、取り調べ段階で弁護人の立ち会いを認める国が増えている。これも被疑者の人権を擁護するために検討すべき重要な課題だ。

 海外からも批判される「人質司法」を改めるため、可視化の拡大とともに導入に向けた議論を進めていきたい。

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