社説

  • 印刷

 夫婦2人世帯の年金暮らしは月5万円の赤字、95歳まで生きるには2千万円の蓄えを-。

 老後の資産形成を促した金融庁金融審議会の報告書が、異例の撤回に追い込まれた。国民に自助努力を求める内容が世論の反発を浴び、麻生太郎金融担当相は「不安と誤解を与えた」と受理を拒んだ。

 2千万円どころか、総務省の家計調査では貯蓄500万円未満が高齢者世帯の2割を超す。政府が掲げる年金の「100年安心」に矛盾すると、多くの国民が憤るのは当然だ。

 野党も攻勢を強めており、参院選に向け悪材料を取り除くのが政府・与党の狙いだろう。

 リスクのある投資を勧める内容の是非はともかく、報告書が示したのは年金の平均的な給付額が生活費に見合わない実態である。政府にとって「不都合な真実」は撤回しても消えない。

 安倍政権は「人生100年時代」を強調し、高齢者の就職を促す。しかし働きたくても働けず、年金頼みの世帯は数多い。実態を踏まえ、老後の安心を増すために社会保障制度を強化するのが政府の責務だ。

 参院決算委員会で安倍晋三首相は報告書について「不正確だった」と釈明したが、「100年安心」を虚偽とする野党の攻撃には反論を重ねた。

 現役世代の負担額を軸に給付額を決め、年金制度を持続させるのが「100年安心」の趣旨だ。しかし給付額自体が安心できる水準かは見通せない。国民が抱く不安はその点にある。

 報告書が問題提起した年金頼みの限界を、首相は直視せねばならない。

 厚生労働省は、将来の厚生年金の給付水準をチェックする5年に1度の「財政検証」に着手している。経済が順調に成長しても30年後には現役世代の手取り収入に対する給付水準が2割目減りする、というのが2014年の検証結果だった。

 前回は6月上旬に公表された。今回は給付先細りの結果を想定し、参院選後に先送りされるとの見方がある。

 「安心」を強調するなら、政府は検証結果を速やかに公表し、年金の将来像と自らの老後について国民が明確にイメージできるようにするべきだ。

社説の最新
もっと見る

天気(6月20日)

  • 28℃
  • 22℃
  • 10%

  • 28℃
  • 18℃
  • 10%

  • 30℃
  • 21℃
  • 10%

  • 31℃
  • 21℃
  • 10%

お知らせ