社説

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 中国本土への容疑者引き渡しを可能にする香港の「逃亡犯条例」改正案を巡り、撤回を求めるデモが激しさを増している。

 9日には1997年の中国返還以来最多の103万人が参加し、中心部を埋め尽くした。12日には立法会(議会)を包囲したデモ隊に、警官隊が催涙弾やゴム弾を撃ち込んで70人以上の負傷者を出した。

 改正案が施行されれば、中国共産党に批判的な活動家らも政府の意のままに引き渡されてしまう。言論や表現の自由が奪われる「中国化」への嫌悪が、市民の怒りに火を付けた。

 香港政府トップの行政長官は改正案を撤回せず、デモを「暴動」と非難した。中国政府も改正案を支持している。立法会は親中派議員が多数を占め、否決は考えにくい。

 このままでは緊張はさらに高まる。香港当局は民意を直視して改正案を撤回し、事態の収拾に努めるべきだ。

 香港は返還後も「一国二制度」の下で高度な自治が保障され司法の独立が認められてきた。

 しかし2014年、中国政府は香港の行政長官選挙の候補者から民主派候補を排除し、これに抗議する大規模デモ「雨傘運動」を押し切った。

 翌年には本土の禁書を扱う香港の書店関係者が中国に長期間拘束された。一国二制度を骨抜きにする意図は明白だ。

 今回のデモには政治に関心が薄かった層も多数参加した。民主主義が脅かされるとの危機感が香港社会に広がっている。

 忘れてならないのは、一国二制度がアジアの金融センターとしての発展を香港にもたらした点だ。自由が失われれば、経済活動にも影響は避けられない。

 欧米やカナダなどは条例改正案に懸念を示した。事態収拾を図らず衝突が拡大すれば、国際社会の批判が高まることを中国政府は覚悟する必要がある。

 一方で、日本政府は「関心を持って注視している」とするにとどめた。腰が引けた反応だ。中国との関係改善を後戻りさせたくないのだろう。

 改正案では、外国人も引き渡しの対象になる。香港市民に加え、現地に住む自国民の権利侵害が憂慮される。その点を日本政府は認識するべきだ。

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