社説

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 がん患者の遺伝子変異を調べ最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」に使う検査が、今月から公的医療保険の適用対象になった。神戸大病院など全国約170カ所の医療機関で受けられる。

 変異を特定できれば、有効な治療法がなかった患者に薬が見つかる可能性をもたらす。臓器別に行われていた従来の治療に代わる新たながん治療として、大きな期待が寄せられている。

 ただ、一般にはまだなじみが薄い。国や医療機関が積極的に情報を発信し、課題を含めて理解を深めていく必要がある。

 検査対象は、血液がん以外で手術や抗がん剤での治療が効かなかった人や、希少がんなどで標準治療のない患者だ。使われるシステムは2種類で、その一つは神戸の医療機器メーカー、シスメックスが開発に携わった。日本人で多く異変が見られる114の遺伝子を一度に調べることができる。

 検査費用は56万円とされ、保険を適用すれば患者の負担は1~3割になる。月ごとの負担に上限を設ける高額療養費制度を利用するとさらに抑えられる。これまでは全額自己負担で数十万円かかっていた。治療法の選択肢が広がり、患者や家族にとっては朗報だ。

 だが、検査をしても最適な薬が見つかるのは1~2割ほどにとどまり、治療につながらないケースが多いと想定される。発展途上の治療だけに、患者への丁寧な事前説明と検査後のケアが欠かせない。

 今回の保険適用に当たって国は、患者の同意を得た上で検査で得られた遺伝情報を国立がん研究センターに提供するという異例の条件を付けた。集約したデータを新薬や新たな治療法の研究開発に生かし、欧米に対抗する狙いがある。

 課題となるのは、究極の個人情報である遺伝情報をどう取り扱うかだ。検査では患者本人だけでなく血縁者ががんを発症する遺伝子を持っていることまで判明する可能性がある。こうした情報は就労や結婚などで差別を生じさせかねない。

 国主導で新たな医療を進める以上、差別を禁じるルールづくりなど患者が安心して検査や治療を受けられる環境整備を急ぐべきだ。

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