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 児童虐待防止のための改正関連法が成立した。児童相談所(児相)の体制強化と親の体罰禁止が柱である。「虐待死ゼロを目指して総力を挙げる」と安倍晋三首相は述べた。

 子どもの健やかな成長には多くの見守る目が必要だ。中でも、最前線で虐待に対応する児童福祉司など児相職員の「質と量」の確保が急がれる。安定的な財源の裏付けが欠かせない。

 法改正のきっかけは、昨年3月に東京都目黒区で5歳女児が虐待死した事件だ。今年1月には千葉県野田市の10歳女児が亡くなった。ともに親からしつけと称する暴力を受けていた。

 法改正の審議のさなかにも犠牲が出た。札幌市の池田詩梨(ことり)ちゃん(2)が衰弱死した事件である。おむつだけの姿で救急隊員に発見され、体中にあざややけどの痕があった。

 目黒区などの事件を教訓に関係機関が動いていれば、救えたはずだ。しかし、またも児相の不手際や警察との連携不足が明らかになった。怒りとやりきれなさが募る。

 札幌市児相は昨年9月以降、詩梨ちゃんに会えていなかった。今年5月、北海道警から訪問に同行するよう2度要請を受けたが「夜間のため難しい」などと断った。道警は単独で訪ね、保護の必要なしと判断した。

 「職員1人あたり100件以上の案件を抱え、非常に厳しい」。事件後、札幌市児相の所長はうなだれた。確かに児相の業務は全国的にパンク状態だ。相談の急増に、人員増と専門性の向上が追いついていない。

 そうであればなおさら、リスクを評価して優先度を決める必要がある。札幌市児相は緊急性を判断する「リスクアセスメントシート」を作成していなかった。通告から48時間以内に子どもの安全を確認する「48時間ルール」も守られなかった。

 警察に保護の判断を丸投げしたのも手痛いミスだった。改正法は関係機関との連携強化を盛り込むが、核となるのは児相である。長期的な視点で人材を育て、職員のスキルを上げることが求められる。

 子どもや親のSOSに機敏に対応するために、国と自治体は現場の声を聞きながら実効ある取り組みを進めるべきだ。

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