社説

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 政府がまとめた2019年版の科学技術白書は、基礎研究の重要性を初めてテーマに取り上げた。

 近年、日本人学者の基礎研究から毎年のようにノーベル賞が生まれている。白書には、昨年受賞した神戸医療産業推進都市機構の本庶佑(ほんじょたすく)理事長らが基礎分野を重視する言葉も並び、日本の研究業績を強調している。

 受賞はあくまで過去の研究の結果である。成果主義の旗の下、大学などの研究現場は大きく変化し、今後は世界的な実績が上がらないのではとの懸念を多くの関係者が抱いている。

 重要性を唱えるなら、政府は研究者が腰を据えて専念できる環境を整え、有言実行の姿勢を示す必要がある。

 白書が示すデータは、日本の研究水準の低下と環境の悪化が連動していることをうかがわせる。引用された論文数はこの10年で世界2位から4位となり、国からの国立大学法人運営費交付金は1割以上も削られた。

 外部資金を得るため研究の「分かりやすさ」が求められ、申請書作成などの事務処理に労力を取られる。研究者が指摘する現場の実態は、白書が基礎研究の特質とする「失敗の蓄積」と相いれない。

 本庶氏が首相に研究予算の増額を直訴したのも一因となったのだろう。政府、与党は18年度から19年度にかけ、研究活動の資金となる科学研究費助成事業を100億円超確保する方針を決めた。

 しかしいくら予算を増やしても、成果主義や「分かりやすさ」で配分するのでは、基礎分野にどれだけ回るか見通せない。重要なのは研究や教育の現場に短期的な結果を求める風潮を改めることではないか。

 白書は基礎研究を「先人から連綿と続き未来へ託すべき営み」と定義し、「短期的な状況や一時代の視点のみで灯を消すことは許されない」とした。

 欧米や中国では基礎研究費の8割以上を政府や高等教育機関が支出しているが、日本は5割強にとどまる。

 収益を生むかは分からない。それでも次代に託さねばならないからこそ十分な支えが必要だ。日本も共有すべき、基礎研究に対する世界の認識である。

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