社説

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 通常国会は、きょう会期末を迎えた。野党5党派が提出した内閣不信任決議案は与党などの反対多数で否決された。与野党は「7月4日公示、21日投開票」と想定される参院選に向け、事実上の選挙戦に突入する。

 2年越しの森友・加計(かけ)学園問題を含め多くの疑惑は残されたままだ。政府による新たな不正や政治家の不祥事も続いたが、安倍晋三首相が出席する衆参予算委員会は4月以降開かれずに終わった。政権の国会軽視の姿勢とともに「言論の府」の機能不全は極まった感がある。

 国会の存在意義とは何か。審判の時を前に、議員一人一人に改めて問いたい。

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 置き去りにされた疑惑の一つが統計不正問題だ。昨年12月に発覚し、今国会前半の焦点となったが解明されていない。

 厚生労働省の毎月勤労統計でルールに反する抽出調査が長年行われていた。調査手法の変更や、その不正を隠すための修正によって賃金の伸び率が上振れした。厚労省は経緯を説明せず数値の発表を続けた。

 アベノミクスの成果を強調したい政権の意向や、官僚による忖度(そんたく)があったのではないかと疑われている。

 誰が、どんな目的で不正に手を染めたのか。政府の調査は疑惑の核心に触れなかった。政治家や首相夫人の関与が疑われた森友・加計問題や自衛隊イラク日報問題と同様、安倍政権の隠蔽(いんぺい)体質を表している。

 統計は政策の基盤であり、効果の検証に不可欠だ。客観的な根拠に基づかない政策決定が横行しかねず、行政の公正性に対する国民の不信を招いている。徹底的に検証し、再発防止策を講じる必要がある。

行政監視は機能せず

 本来は行政を監視し、是正策を求める国会の出番である。だが政府、与党は参考人や資料を小出しにして野党の追及をかわした。野党の質疑は調査手法の詳細に入り込み、国民の疑問に答えるには至らなかった。国会が持つ強力な権能を発揮したとは言い難い。

 深刻なのは、国会終盤に浮上した老後資産に関する金融庁金融審議会の報告書問題だ。

 年金以外に2千万円の蓄えが必要と試算した報告書は国民がうすうす感じていた老後不安を端的に指摘したにすぎない。これが年金制度の「100年安心」を唱える政権の意に沿わないとして、諮問した麻生太郎金融担当相が受け取らない前代未聞の事態となった。

 存在は明らかな文書をなかったことにして議論すら封じようとする。あからさまな隠蔽と国会軽視である。与党は異を唱えないどころか野党の予算委員会開催要求にも応じなかった。言論の府としての存在意義を自ら否定する行為ではないか。

 大島理森衆院議長が、森友学園を巡る公文書改ざんなどの不祥事が焦点となった昨年の通常国会を振り返り、異例の所感を公表したのは1年前のことだ。

 政権に対し「民主主義の根幹を揺るがす」と苦言を呈し、立法府の責任として「国民の負託に応える行政監視活動をしてきたか検証の余地がある」と注文を付けた。この指摘は、今国会でも生かされなかった。

 不正に対し、根拠を示さず「問題なし」と強弁する政権の姿勢は相変わらずだ。しかし与党の事なかれ主義と野党の力不足が相まって国会は追及しきれない。第2次安倍政権の6年半で繰り返された光景である。

 同時に、失言や不祥事を重ねながら責任を取ろうとしない政治家や、首相官邸の顔色ばかりをうかがう官僚の姿が目に付くようになった。

問われる「1強政治」

 安倍1強の長期政権は、安定の中に、おごりやゆがみの危険をはらむ。政治の力を正しく生かすには国会の監視機能強化が欠かせない。衆参、与野党を問わず、国会議員は責任の重さを肝に銘じてもらいたい。

 参院選は、政権の現状を評価する中間選挙の意味を持つ。今回改選を迎える議員は、任期がそのまま第2次安倍政権の歩みと重なる。「安倍政治」そのものが問われる選挙である。

 一時は首相が衆参同日選に踏み切るとの見方が広がった。2014年、17年と政権立て直しを目的に衆院解散に打って出た首相だが、今回は衆院の3分の2を占める与党勢力を失うリスクを冒す必要はないと判断したようだ。在任中の憲法改正が念頭にあるのは間違いない。

 そもそも同日選を実施してまで国民の信を問う大義は乏しい。都合のいいデータで実績を主張するばかりでなく、直面する課題への展望を示し、謙虚に国民の評価を待つべきだ。

 解散風に浮足だった野党は、不信任案提出でもぎりぎりまで足並みがそろわず、共闘に不安を残した。選挙戦では共通政策を明確にして、政権との対立軸を示さねばならない。

 国会を機能させるには有権者の厳しい目が必要だ。言論の府を託すにふさわしい政治家の資質を見極める選挙にしたい。

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