社説

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 窃盗や傷害の罪で刑務所に収容されるはずの男が逃走し、公務執行妨害容疑で逮捕される事件が神奈川県で起きた。

 男が目撃された市町では小中学校が休校になるなど住民は丸4日間不安な時を過ごした。

 収容を受け持つ検察の責任は極めて重い。失態を重ねた原因を究明し、再発防止につなげねばならない。

 問題はまず収容時の横浜地検と神奈川県警の対応にある。

 検察事務官5人と警察官2人が自宅アパートを訪れた際、男に包丁で威嚇され、逃走を許した。警察官は拳銃を携帯していなかった。しっかりとした準備があれば、これほどの事件にはならなかったはずだ。

 初動対応のまずさが事態を悪化させた。県警本部などへの連絡が遅れ、緊急配備までに5時間近くもかかった。現場で確実に身柄を確保することの重要性が、双方の組織でどれほど共有されていたか。

 事態の公表や自治体への連絡が遅れたことも問題だ。住民の安全を軽視している。昨年8月に大阪府警富田林署から容疑者の男が逃げ、地域を不安と混乱に陥らせた。その教訓は生かされていなかったのか。徹底した経緯の検証が必要だ。

 一方で、保釈されている実刑確定者の身柄の扱いという課題も浮き彫りになった。逃走した男は、今年2月に実刑判決が確定したが、書面の出頭要請に応じず、検察側は接触できていない状況にあった。

 今回の事件のように逃げた実刑確定者は「遁刑(とんけい)者」と呼ばれる。逃走に適用する刑罰はなく、昨年末時点で26人に上る。裁判所の保釈許可が増えていることと関連づける見方もあるが、数は1960年代と比べれば3~4%程度にすぎない。

 保釈の拡大は「人質司法」の解消という刑事司法改革に沿った動きである。今回の事件と結びつけるのは筋が違う。実刑確定者を確実に収容するための対策は、別に考えるべきだ。

 出頭拒否のペナルティーを重くする法改正や、保釈後に所在が分かる装置を装着させるなどの意見も聞かれる。

 人権と社会の安全確保のバランスを考慮しながら、対策を考えねばならない。

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