社説

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 政府が半導体材料の韓国向け輸出規制の強化に踏み切った。元徴用工問題について、韓国側が満足できる解決策を示せなかったためという。事実上の対抗措置である。

 菅義偉官房長官は、安全保障を目的とした輸出管理の一環とし、自由貿易体制には逆行しないと主張した。韓国は、すかさず世界貿易機関(WTO)への提訴検討を表明した。このままでは日韓対立の泥沼化は避けられない。

 元徴用工問題に加え、日韓合意に基づく慰安婦財団の一方的な解散や、自衛隊機へのレーダー照射など関係悪化の責任の多くは韓国側にある。

 とはいえ、政治的な対立の場に通商政策を持ち出せば、報復の連鎖を招き、影響は世界経済全体に及ぶ。米中対立がそのリスクを示したからこそ、G20大阪サミットの首脳宣言は「自由で公平な貿易」の実現を掲げたのではなかったか。

 ほんの数日前まで、日本は議長国としてその取りまとめに奔走していた。「自由貿易の旗手」を自負するなら、政府は唐突な対抗措置を撤回すべきだ。

 規制強化は半導体材料のうち3品目について、輸出手続きを簡略化する優遇措置を廃止する。他の電子部品などについても、軍事転用の恐れがないとして規制が緩和されている「ホワイト国」から韓国を除外することで対象を拡大する。

 3品目の生産量は日本企業が世界の約7割を占めており、韓国経済の柱である半導体やスマホ製造には大打撃だ。

 安倍政権には、参院選を前に対韓国への強硬姿勢を示し、支持基盤の保守層にアピールする狙いもあるのだろう。

 だが、韓国製品は日米を含む各国で使われている。世界に広がる製品や素材の供給網をせき止めれば、いずれ日本にも影響は跳ね返る。その点を政府はどれだけ真剣に検討したのか。

 今回の措置が元徴用工問題の解決につながる保証はない。友好国の韓国に対し「安全保障」を理由に掲げる振る舞いも理解に苦しむ。

 良好な関係を取り戻すことが地域の安定に資する。両国は粘り強い対話で外交問題の解決を目指さねばならない。

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