社説

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 参院選がきょう公示される。衆院選のように政権選択には直結しないが、安倍晋三首相の6年半に及ぶ政権運営を有権者が評価する機会だ。

 11月に歴代最長となる長期政権を目指す首相は「最大の争点は、政治の安定」と胸を張る。度重なる国政選挙で勝利し、「1強体制」を築き上げた。

 だが政治への信頼は高まったか。むしろ政治の活力は衰え、課題に対応する機能が低下した。その結果、国民の将来不安は深まっているのではないか。

 解散のない参院議員には6年の任期が保証される。中長期的な課題に向き合い、議論する政治家がもっと必要だ。政治の活力を取り戻さねばならない。

     ◇

 選挙戦スタートに当たり、安倍首相が2度目の政権を担った6年半を振り返ってみたい。

 今回改選されるのは2013年に当選し、任期のほとんどを第2次安倍政権とともに歩んだ議員たちの議席だ。前年の衆院選に勝利し政権復帰した自民党は、続く参院選でも圧勝し、野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」を解消した。安倍政権が1強政治に向かう分岐点となった選挙といえる。

「数の力」がすべてか

 首相は政権復帰した衆院選を含め既に5回の国政選挙で勝利を重ねた。選挙で得た数の力をフルに発揮して、国民の慎重論が強い政策を推し進めた。

 典型は、国民の「知る権利」の侵害が懸念される特定秘密保護法の制定であり、歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の強行採決である。

 政権維持を目的とした衆院解散も繰り返された。14年に任期を2年残して衆院を電撃解散した際は、消費税率10%への増税延期の是非を問う、というあまりに身勝手な理由だった。

 17年には加計(かけ)学園問題などで支持率が急落する中、野党の召集要求を逆手に取った臨時国会の冒頭解散に踏み切った。いずれも与党が定数の3分の2を確保し、問題点を抱えたまま政権が強化される矛盾が生じた。

 批判の受け皿たりえない野党の脆弱(ぜいじゃく)さが政権の延命を可能にしたともいえる。

 16年の参院選では、1カ月前に首相が消費税増税の再延期を表明した。「再延期はしない」との前言を翻したと批判を浴びつつも与党は勝ち、野党の一部を含めて憲法改正に賛同する改憲勢力が3分の2を超えた。

 与党が圧倒的多数の国会審議は結論ありきで進み、政策論議は深まらない。首相は批判に耳を貸さず、与党にも首相の意向に異論を唱えにくい空気が広がった。議論の空洞化は民主主義の根幹を揺るがす事態である。

 議論を戦わせる中で多様な意見の最大公約数を探り当て、合意に導くのが政治本来の役割である。その機能が失われつつあるのは、1強政治がもたらした最大の弊害ではないか。

 長期政権は緩み、おごりがつきものである。閣僚らの失言による辞任、森友・加計問題など不明朗な政策決定や公文書改ざんなどの不祥事が続発した。首相官邸の顔色をうかがうばかりで、失態や不正の責任を取ろうとしない政治家と官僚の姿に国民の失望は深まっている。

 危機的状況を変えるには、与野党を超えて問題意識を共有する議員を増やすしかない。

実績検証が不可欠だ

 政権の実績は、首相の在任期間の長さでは測れない。

 安倍政権は、経済政策アベノミクスや働き方改革、女性の活躍、1億総活躍、幼保無償化、全世代型社会保障など、国民の関心が高い分野で次々に新しい看板を掲げてきた。

 政府が示すデータは雇用の増加や経済指標の改善を表すものの、国民の実感が伴っていない。首相が重視する「地方創生」でも東京一極集中に歯止めがかかるどころか加速している。

 首相が2度先送りした消費税増税が10月、いよいよ実施される。野党は凍結・反対で足並みをそろえる。

 老後に2千万円の蓄えが必要と試算した金融審議会報告書で急浮上した年金不安と併せ、少子高齢社会を支える財源をどう確保するかは国民的な関心事だ。持続可能な社会保障制度をどう構築するか。各党の公約を吟味したい。

 首相が得意とする外交ではトランプ米大統領と蜜月関係を築き、イラン訪問、G20大阪サミットなど一定の見せ場はつくった。だが、北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの北方領土交渉などは進展が見られない。

 憲法改正について首相は、20年の改正憲法施行を目標とする。しかし憲法審査会の議論は進まず、国民の関心も高いとはいえない状況だ。

 安倍政権が6年半で何を達成し、何ができなかったのか。現状と課題を検証し、効果のない政策は見直す時期に来ている。

 首相は何を目指すのか、選挙戦で改めて明確に語るべきだ。野党は対抗軸となる政策を掲げ、有権者に選択肢を示す論戦を展開してもらいたい。

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