社説

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 広島や愛媛、兵庫など14府県で270人以上が犠牲となった西日本豪雨から1年となった。

 被災地では梅雨の大雨を警戒しながら、決壊した河川や砂防ダムの工事を進めているが、被害箇所が多く、復旧は長期化している。大洪水に見舞われ、7千人以上が仮住まいを余儀なくされている岡山県倉敷市真備町地区など、暮らしと産業の再建途上の地域も少なくない。

 九州から東海まで広範囲に及んだ豪雨災害は、地球温暖化が要因と指摘されている。経験したことのない災害が、気候変動によって多発する時代に入ったと見るべきだ。地域の課題を掘り下げ、新たな災害への対応力を高めていかねばならない。

 一昨年の九州北部を含め、西日本は毎年のように梅雨の豪雨被害に襲われている。台風と違って強い雨が同じ場所で長時間続くのが特徴だ。

 湿った空気が梅雨前線に流れ込み、積乱雲が連続発生する「線状降水帯」は、先日の九州南部の記録的な大雨でも確認された。鹿児島、宮崎両県で避難指示の対象は110万人を超えた。気象庁が5月から運用を始めた、生き残るために取るべき行動を5段階で表示する大雨・洪水警戒レベルは「全員が緊急避難」のレベル4となった。

 大きな被害が確認されていない地域でも降り始めからの雨で地盤が緩んでいる可能性があり、引き続き警戒が必要だ。

 西日本豪雨の被災地では、被害の教訓から防災対策の見直しも進んだ。避難情報に住民が対応しやすいよう、対象区域を細分化した自治体もある。

 ダムを守る緊急放流が下流の被害を大きくした問題を受け、一部地域では電力会社に要請して事前に放流する運用が始まった。被害がなかった市町でもこうした連携は進めるべきだ。

 肝心なのは、最終的には一人一人の判断に委ねられるということだ。自治体のハザードマップを確認しておく。行政や民間が発信する地域の雨量や河川水位の情報をふだんから活用する。周辺の危険度を知っておくことが身を守る大前提となる。

 行政の対応には限界があることを住民も認識し、早めの行動で自ら命を守る地域主体の防災への意識を高めたい。

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