社説

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 日米関係に関して「同盟」という言葉をよく耳にする。

 今回の参院選でも「日米同盟をより一層強固に」(自民党)「日米同盟の強化」(公明党)、「日米同盟を基軸に」(国民民主党)など、与野党の複数の政党が公約に掲げている。共通するのは、「同盟」が日米関係の基礎であるとの認識だ。

 ただ、この場合の「同盟」は軍事関係を意味している。友好関係を指す「パートナーシップ」などとは別の意味合いがあることに留意する必要がある。

 日米のあるべき関係について立ち止まって考えたい。

      ◇

 「同盟」という言葉が初めて登場したのは、1981年の日米共同声明だった。当時の鈴木善幸首相とレーガン米大統領の会談を踏まえて発表された。

 冷戦が続く中、ソ連はアフガニスタンに侵攻し、東西の緊張は高まっていた。そうした情勢下で国会論議は紛糾した。

「力の論理」への危惧

 伊東正義外相は「同盟」の軍事的な意味があることを認めた。だが鈴木首相が否定したため「閣内不一致」と追及され、外相が辞任する事態になった。

 結局は鈴木首相も軍事色を認めて混乱の収拾を図る。一方で「現状以上に新たな軍事的意味はない」との見解を示すことで不安を解消しようとした。

 日本は戦後、過去の反省に立って不戦の道を歩んだ。それだけに米国との軍事協力に対する国民の抵抗感は根強かった。政治家の多くも戦争体験者で、一線を越えないかと懸念を抱いた人は少なくなかった。

 神戸新聞は社説で次のように指摘している。

 「『力の論理』に加担し、果てしのない軍拡競争に巻き込まれることにならないかと、多くの国民が危惧している」「『同盟』という表現が独り歩きを始めれば危険このうえない」

 それから38年。日米の軍事連携は着々と進んでいる。安倍政権は憲法解釈を変更し、歴代内閣が「できない」とした集団的自衛権の行使を容認した。安保関連法を制定し、自衛隊の活動範囲を地球規模に拡大した。

 さらに最新鋭戦闘機F35や地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」など、巨額の装備を米国から購入する。

 当時の「危惧」は現実のものとなりつつあるといえないか。

 一方で「同盟」への抵抗感は次第に薄れ、「友好関係」と誤解している人も少なくないようだ。だが「同盟」は歴然とした軍事連携である。空気に流されずに是非を判断したい。

 「同盟」の根拠は日米安全保障条約である。日本への武力攻撃があれば、米国は日本を防衛する義務を負う。代わりに日本は米軍基地を受け入れる。

 それに加えて日本は毎年、多額の経費を負担している。総額8千億円を超えるとされ、負担率は86・4%。韓国やドイツと比べても突出した数字だ。

 それだけに、安保条約破棄に言及したとされるトランプ米大統領の発言は波紋を広げた。

 「米国が攻撃されても日本は戦わなくていい。条約は不公平だ」。G20大阪サミット後の会見でもそうした主張を繰り返した。この半年、安倍晋三首相にも伝えてきたという。

 日本側は「双方の義務は均衡している」とする。だが貿易交渉に絡めた揺さぶりを警戒してか、G20で首相がトランプ氏に真意を問うことはなかった。

 トランプ氏は就任前から同様の発言を繰り返し、日本に負担増を求めている。ただでさえ米側には「血を流すのは米国の若者だけ」との不満があるとされる。世論が刺激され、日本に軍事的な行動を求めてくる可能性も否定できない。

 実際、トランプ氏は中東で日本のタンカーが攻撃された際も「自国の船は自分で守るべきだ」とツイッターに投稿した。首相は親密な首脳外交で「強固な同盟」を演出したが、思惑や利害の違いを露呈した。

 米国とどう向き合うか、熟考するときが来たといえる。

「平和主義」に立って

 参院選の公約では、安保条約の「廃棄」や「平和友好条約への転換」を主張する共産、社民両党に対して自民、公明、立憲民主、国民民主、日本維新の会の各党は「同盟」と安保条約を維持する立場だ。

 ただ立憲民主、国民民主は安保条約に伴う日米地位協定の「改定」、維新は「見直し」を掲げている。公務中の米兵や軍属が起こした事件事故では米国の裁判権が優先される。公明も検討課題としているように、日本側から見た不平等をどうするかは未解決の重大な問題だ。

 憲法学者らが「違憲」とする安保関連法も、野党は「廃止」や「要件の厳格化」などを主張する。米軍と自衛隊の共同行動を拡大した法の見直しは「同盟」の問い直しにつながる。

 「平和主義」は日本の国是である。一方で米国の抑止力に安全保障の多くを委ねている。そうした現実を踏まえ、どんな二国間関係を構築するか、踏み込んだ論戦を期待したい。

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