社説

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 ハンセン病家族訴訟で国に損害賠償を命じた熊本地裁判決について、安倍晋三首相が控訴しないと表明した。

 国の誤った患者隔離政策が招いた家族への差別被害を認め、541人に計約3億7600万円の賠償を命じた判決が確定することになる。

 中央省庁には控訴を当然視する声もあっただけに、控訴期限の12日を目前にしたトップダウンの判断は、参院選への影響を考慮した政治的理由もあったとみられる。

 安倍首相は「家族の苦労をこれ以上、長引かせない」と表明した。だが一方で、判決の一部に受け入れがたい点があるとし謝罪や国の責任に言及しなかった。これでは真の救済につながるのか疑問だ。

 まず被害を招いた国の法的責任を明確に認め、謝罪する。それが、全面解決に向けて首相の果たすべき役割ではないか。

 判決は、国が遅くとも1960年の時点で隔離政策を廃止しなかったことや、その後も差別・偏見を解消する措置を取らなかった点を違法と判断した。

 国の政策によって家族が就学や就労を拒否され、村八分で最低限度の社会生活が失われるなど深刻な被害を受け続けたことも指摘した。

 控訴断念の方針を評価する原告もいる一方で、「遅きに失した」との見方もある。長く救済を訴えてきた元患者家族の声に耳を傾け、国が自らの過ちを早期に検証していれば、これほど甚大な人権侵害は続かなかったはずだ。

 原告となった家族の多くが匿名で、訴訟に加わったことにより離婚に追い込まれた人もいる。被害を訴えることもできず、隠し続けている人も多数いる。国はその現実を直視して、差別を受けた家族の掘り起こしに努めるべきだ。

 救済対象となる被害をどう認定するか。賠償額の算定基準をどうするか。早急に練り上げるべき課題は山積する。

 国会の責任も大きい。家族も含めた全面救済に向けて、議員立法で2009年に施行されたハンセン病問題基本法の改正なども検討を急ぐ必要がある。国を挙げて名誉回復や経済的支援の施策を急がねばならない。

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