社説

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 「郵便局なら」と、信用して印鑑を押した人も多いだろう。

 日本郵政グループのかんぽ生命保険が、不利な契約を結ばせるなどの不正販売を行っていた。その数は9万件以上となり、2007年の郵政民営化以降で最大の不祥事である。

 6月にはゆうちょ銀行で、リスクなどの理解を確かめず高齢者に投資信託を販売していたことが発覚した。いずれも郵便局が舞台となっていた。

 民営化といいながら、かんぽ生命やゆうちょ銀、郵便局を展開する日本郵便も経営権は政府が握る。「親方日の丸」を逆手にとった、国民への裏切りだ。

 金融庁は業務改善命令など行政処分の検討に入った。不正販売の全容は明らかでなく、顧客が認識していない可能性もある。日本郵政は実態解明を急ぐとともに、救済と再発防止に全力を注がねばならない。

 今回の不正の背景には、郵便局職員の過剰なノルマがある。

 新しい契約をとっても、6カ月以内に旧契約が解約されるなどすれば社内で「乗り換え」扱いになり、手当や営業成績は新規と同水準にならない。そこで旧契約も続けて顧客に保険料を二重払いさせたり、新旧契約の間に空白期間を設け無保険にしたりする手口が横行した。

 日本郵便は組織的な関与を否定する。しかし手紙やはがきの利用が落ち込み、かんぽ生命からの手数料収入は貴重な命綱だ。ノルマ達成が職員の重圧となり、不正の手口を共有していたと容易に想像できる。

 苦境に立つのは、グループの利益を支えるかんぽ生命やゆうちょ銀も同じだ。低金利下で生き残るため、全国の金融機関が保険や投資信託の販売に参入し、競争は激しさを増す。

 政府はかんぽ生命やゆうちょ銀の株を売却し、最終的には完全民営化する方針だ。しかし多くの金融機関が「顧客重視」を意識する中で、ノルマ重視の古い体質を残したままでは、自立した健全経営は望めない。

 郵便局は全国2万カ所以上に展開し、地域の重要な金融サービスの拠点となっている。その信用を取り戻すためにも、グループ全体が顧客の利益を最優先する企業風土に生まれ変わらねばならない。

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