社説

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 10月に予定されている消費税率10%への引き上げが、参院選の大きな争点になっている。

 当初は2015年に引き上げると決まっていたが、安倍晋三首相は2度先送りした。今回の参院選も、一時は再々延期を掲げ衆院との同日選に踏み切るとの観測が広がった。

 負担増を積極的に支持する国民はあまりいないだろう。一方、少子高齢化で社会保障費が膨らみ続けることを考えれば、消費税率10%で収まるのかと懸念する声も少なくない。

 目先の増税の是非を争うだけでなく、将来への懸念を受け止めた論戦が重要だ。

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 消費税は26%まで上げる必要がある-。今年4月、主要国で構成する経済協力開発機構(OECD)がこんな数字を日本政府に示し、実行を促した。

 支出が税収を上回り、穴埋めに国債を発行する。毎年の繰り返しが、1100兆円を超える借金の山を築いた。

 その山を少しでも低くするには、支出と税収を釣り合わせて新たな借金をなくすのが第一歩になる。26%まで消費税率を引き上げれば収支均衡は達成できるとOECDは唱えた。

 税率26%は生活感覚からは到底受け入れがたい数字だ。そうまでしなければ、日本の財政健全化は入り口にすら立てない実態を物語っている。

 ところが首相の認識は異なる。参院選公示直後、「税収は順調に伸びている」として、消費税率10%からのさらなる引き上げが10年程度は不要との考えを示したのだ。麻生太郎財務相も同調した。

 民主党政権時に40兆円台だった税収は、第2次安倍政権で50兆円台に増え、本年度は消費税増税も織り込んで史上最高の62・5兆円が見込まれる。

 政権として増税打ち止めをアピールし、負担感を緩和する狙いだろう。だが、その場しのぎの印象は否めない。

次代の重荷を想像し

 毎年の借金は30兆円台と高水準にある。社会保障費は年1兆円ずつ膨らむ一方、消費税率引き上げによる税収増は6兆円に満たない。単純計算でも数年で増税効果は帳消しになる。

 今後10年を待たず、6年後の25年には団塊の世代が後期高齢者となり、社会保障の公費負担が現在より約10兆円膨れ上がると厚生労働省は試算する。

 消費税率を10%でとどめた場合、他の税収の伸びでカバーできるのかについて、首相も財務相も言及していない。

 足元の好材料にとらわれず、10年先、20年先まで見据えねば財政の将来像は描けない。

 次代が背負う借金の重さに想像力をはたらかせ、負担増の見通しも含めて政治の責任を果たす。有権者はそんな政党、候補者を見極める必要がある。

 今回の参院選では、消費税率引き上げで「全世代型社会保障」を構築すると理解を求める与党に対し、野党は「増税できる経済状況にない」として反対で足並みをそろえた。

 自民、公明両党は、景気失速に備え、キャッシュレス決済へのポイント還元など総額2兆円を超す景気対策を強調する。ばらまき批判や買い控えの懸念に応える必要がある。

 野党は消費税増税に代わる財源確保策を競う。家計重視を掲げる立憲民主党、国民民主党は金融所得課税や法人税の見直しなどを主張し、共産党、社民党は大企業や富裕層の課税強化を訴える。日本維新の会は規制緩和による経済成長と国会議員の「身を切る改革」を掲げた。

 所得税や法人税をどう見直すのか、有権者の判断に資する具体的な数値を示すべきだ。

社会保障の見直しも

 消費税増税への有権者の反応は分かれる。共同通信社の全国電話世論調査では、引き上げに「反対」が54・3%、「賛成」が40・8%となった。

 社会保障を支えるために増税が必要だとしても、膨れ上がる一方の国の予算を削るのが先だ。それが多くの有権者の率直な思いだろう。

 民主党政権時代の12年、民主、自民、公明の3党が消費税率10%への引き上げで合意したのは社会保障の維持と財政健全化の両立が目的だった。その原点を見失ってはならない。

 政府は新たな借金をなくす「基礎的財政収支の黒字化」を20年に達成するとの目標を掲げていたが、実現が難しくなると25年に先送りした。

 目標達成に努力する姿が見えないまま、ゴールの位置を変えるようでは財政健全化への取り組みの真剣さが疑われる。

 まずは効果に乏しい、需要が見込めないなど、無駄な歳出を徹底して絞り込むことが不可欠だ。同時に必要なサービスが提供できているか、格差是正に結びついているかなど、社会保障全体の見直しも必要になる。

 財政再建と社会保障改革の全体像を描いた上で、そのために必要な国民負担はどの程度かを具体的に示す。これ以上の先送りは許されない。腰の据わった議論が与野党に求められる。

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