社説

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 労働実態がありながら給料が支払われていない「無給医」が大学病院に2千人以上いることが、文部科学省の調査で初めて明らかになった。

 多くは大学院生などの若手で、生活費を得るため、別の医療機関でのアルバイトに追われる実態がある。過去には過労が影響し、死亡した例もあった。疲れが蓄積した中で診療に当たればミスが誘発され、患者が危険な目に遭いかねない。

 労働基準法違反も疑われる異常な状態だ。各大学病院は直ちに適切な待遇に改めなくてはならない。

 大学病院には、大学院生のほか、自己研さんや研究目的の医師が在籍し、その一環で診療に携わる場合には給与が支払われない慣習が広く存在する。

 文科省の調査は、大学病院から報告を求める形で、全国の国公私立99大学の108付属病院に所属する医師と歯科医師の計3万1801人を対象に実施した。その結果、無給医は50の大学病院に計2191人いることが判明した。多くが雇用契約を結んでおらず、労災保険も未加入だった。

 最多は順天堂大順天堂医院の197人で、兵庫県内でも兵庫医科大病院で30人が確認されている。

 いくら研修や研究のためといっても、免許を持つ医師による診察で大学病院は報酬を得ている。賃金が支払われるのは当然だ。医師の使命感に頼った、あしき慣習と言わざるを得ない。

 背景にあるのが教授を頂点とした大学医局のピラミッド構造である。底辺にいる大学院生らは将来の処遇などに影響することを恐れ、表だって声を上げられる状況にない。

 実態を確認中の医師は、日本大板橋病院、東大病院など7大学病院に計1304人おり、無給医はさらに増える可能性がある。大学病院によって調査手法や無給医かどうかの判断に違いがあり、公表されたのは氷山の一角との指摘もある。

 若い医師は日本の医療の将来を背負って立つ。彼らを守り、医療の質を確保するためにも悪習を根本から断たねばならない。国は監督権限を発揮して実態を徹底解明し、抜本的な改善につながるよう尽力すべきだ。

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