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 長崎はきのう、被爆から74年の「原爆の日」を迎え、犠牲者を悼む多くの祈りに包まれた。

 式典で田上富久長崎市長は昨年に続き、使用や開発から保有まで全面的に禁じる核兵器禁止条約への署名と批准を政府に求めた。6日の広島市での式典でも、松井一実市長が被爆者の要望を受け、初めて禁止条約署名・批准の要求を掲げた。

 二つの被爆地が足並みをそろえた意味は大きい。来年には75年の節目が巡ってくる。被爆者の悲願である核廃絶に向け、しっかりとした流れを築く契機にしなければならない。

 危機感を覚えるのは、この1年で核を巡る国際社会のたがが急速に緩みだしている実態だ。

 東西冷戦終結の象徴ともいえる中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させた米ロは、中国とともに核開発に前向きな姿勢を示す。北朝鮮の非核化を巡る米朝協議は停滞し、イラン核合意は崩壊の危機にひんしている。

 だが広島でも長崎でも、式典であいさつに立った安倍晋三首相は非核化への努力を唱え、「核保有国と非保有国の橋渡しに努める」と、従来の立場を繰り返すだけだった。

 米国の「核の傘」に依存する現実ゆえ、政府は禁止条約に反対の立場を崩さない。式典後の会見で首相は「保有国が反対し、国際社会に分断をもたらしている」と署名・批准に否定的な考えを改めて示した。

 被爆者の一人は、首相に対し「米国に追随することなく核廃絶の毅然(きぜん)とした態度を示してほしい」と力を込めた。政府は訴えに正面から向き合うべきだ。

 全国の被爆者数は今年初めて15万人を割り込んだ、平均年齢は82歳を超え、高齢化が進んでいる。記憶の継承も被爆地の深刻な課題だ。「生きているうちに核廃絶を見届けたい」という悲願を実現に近づけたい。

 禁止条約の前文には「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」との文言がある。

 率先して賛同し、参加するのが、唯一の被爆国である日本の責務だ。それにとどまらず、条約に反対する核保有国を引き入れる努力も重要になる。

 私たちは広島や長崎と連携し、政府が態度を変えるよう働き掛けを強める必要がある。

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