社説

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 火の粉が降り注ぐのを避けたいという判断なのか。だとすれば、そのこと自体が問題と批判されても仕方がない。

 ジャーナリストの津田大介氏が芸術監督を務める愛知県の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展中止に続き、神戸市などが津田氏を招いて18日に開く予定だったシンポジウムの中止を発表した。

 「あいち」の企画展では、従軍慰安婦を象徴する少女像展示などへの抗議が過熱し、「ガソリン携行缶を持っておじゃまする」と書いたファクスを送りつけた男が威力業務妨害の容疑で逮捕される騒ぎになった。

 津田氏に対する批判も高まり、シンポの登壇者として招くことを決めた神戸市や外郭団体の市民文化振興財団にも、抗議や問い合わせの電話などが約200件あったという。

 しかし、その中には「予定通りやってほしい」という要望もあった。参加を希望する市民の機会を奪ったことにもなる。判断は拙速というしかない。

 シンポは、9月から兵庫、長田区で開かれる「アート・プロジェクトKOBE2019 TRANS(トランス)-」の関連行事として計画された。神戸側のディレクターらが津田氏と芸術祭のあり方などについて広く意見を交わす予定だった。

 ところが直前になって神戸市や財団に「津田氏はふさわしくない」などの抗議が殺到した。一部の市議が登壇者の見直しを直接財団に求める動きもあり、混乱が拡大する事態を懸念して中止を決めたという。

 「開催しても『あいち』の問題ばかりが注目され、冷静な議論ができなくなる恐れがある」。市や財団の関係者は中止の理由をそう説明する。

 だが、それでは「津田氏降ろし」の圧力に公的機関が屈した形になる。

 「あいち」の問題は、憲法が保障する「表現の自由」の危うさを浮き彫りにした。中止は結果的に自由を制約する側の動きを追認したと映るだろう。

 お蔵入りになったシンポのテーマは「アートは異物を受け入れるのか」。ならば激しい意見の対立を乗り越えてどう「異物」を受け入れるかに、市民も交えて知恵を絞るべきだった。

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