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 東西冷戦終結の象徴ともいえる米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効して1カ月が経過しようとしている。

 この間、トランプ米政権が地上発射型巡航ミサイルの発射に踏み切った。核搭載も可能な短・中距離ミサイルの全廃を柱とする条約が禁じていたタイプのミサイルの実験は、実に約30年ぶりとなる。

 あまりにも拙速で挑発的な行動と言わざるを得ない。他の核保有国を刺激し、核開発競争を招いた冷戦時代に加速度的に逆戻りしかねない。

 米の実験を受け、国連安全保障理事会が開いた緊急会合で、米国は、中ロとの3カ国による軍縮の枠組み創設を訴えた。

 実験を再開した米国に、そんな主張をする資格があるのか疑問が残る。しかし、条約が失効した今、世界の核弾頭の9割以上を保有する米ロに新たな核軍縮の流れをつくる責務があるのは確かだ。

 INF廃棄条約に縛られず、中距離ミサイルを多数保有するとされる中国も加え、検討を急がねばならない。

 だが、事態は容易ではない。

 米国の実験後、ロシアのプーチン大統領は「同様のミサイルの開発を再開する」と表明している。中国の張軍国連大使は「『3カ国軍備管理交渉』には参加しない」と述べ、米ロとの軍事力の差を指摘し、今後も開発を進める考えを示した。

 このままの状態が続けば、世界は核ミサイルであふれかねない。人類の存亡をも左右する核兵器廃絶を、国際社会が連携して希求すべきときに、軍事大国が強硬的な振る舞いに終始するのは容認できない。

 米ロ間では、核弾頭数や大陸間弾道ミサイルなどの運搬手段総数を制限した新戦略兵器削減条約(新START)も2021年に期限が切れるが、延長交渉の行方は不透明さを増している。貴重な歯止めを失うようなことがあってはならない。

 イラン核合意が崩壊の危機にあるなど、核を巡る国際環境は急速に悪化している。唯一の被爆国としての日本の責任は重い。新たな核軍縮管理体制の構築を後押しし、「核なき世界」の実現に向けて国際社会をリードする力量が問われている。

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