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 厚生労働省が公的年金の財政検証結果を発表した。5年に1度、人口や経済状況などが変化しても年金制度が持続するとの試算である。

 現役世代の手取り収入と比べた年金給付額の水準を示す「所得代替率」を、50%以上にするというのが政府の約束だ。5年前と同じく、今回の結果もこの水準を維持できるとした。

 だが標準的なケースでは、約30年後に年金の実質的な価値が現在の65歳と比べて約2割目減りする。制度を持続させるため、賃金や物価の伸びより給付額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」の影響だ。

 しかも経済が成長し、高齢者や女性の就労が進むとの前提条件が付いている。ゼロ成長で試算すれば、代替率は5割を割り込む。これでは、国民が老後の暮らしに安心感を抱けるとは言いがたい。

 幸い、年金財政に直ちに赤信号がともる状況までには至っていない。政府は今のうちに腰を据え、制度全体の改革に取り組まねばならない。

 年金財政を立て直す方策の一つは、担い手を増やすことだ。厚生年金の適用対象者を拡大した場合の試算では、給付水準が上昇した。

 国民年金も含めた年金財政全体の底上げにつながり、検討に値する。ただ、新たな保険料負担が生じる中小企業などに配慮し、税制面の支援も組み合わせた制度設計が必要だろう。

 深刻なのは基礎年金(国民年金)部分の落ち込みだ。試算では給付水準が3割目減りする。

 自営業者や非正規労働者など国民年金だけに頼る人は増えており、現状でも、給付水準は厚生年金と大きな開きがある。将来的な目減りが追い打ちを掛け、低年金で生活に窮する高齢者が多くならないか懸念する。

 そもそも財政検証自体、モデルとしているのは厚生年金受給者と専業主婦の2人世帯だ。男性正社員中心で女性の働く場が限られた高度成長期の発想であり、時代に即していない。

 少子高齢化に加え、働き方の多様化や単身世帯の増加など、社会構造は大きく変化している。その点を踏まえて給付と負担のあり方を見直し、年金制度を再構築する必要がある。

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