社説

  • 印刷

 政府は、「地方創生」の看板政策と位置付ける政府機関の地方移転で、検討していた消費者庁の徳島県への全面移転を見送る方向となった。

 宮腰光寛消費者行政担当相が同県を訪れ、「国会対応などは東京でしかできない。徳島の拠点と両方で政策立案し『車の両輪』とする」と表明した。

 2017年から徳島県庁内に試験的に置いていた調査研究などの拠点を20年度に常設化し、人員を50人から80人に増やす。現地のトップを審議官に格上げし、大規模災害時のバックアップ機能も持たせるという。

 拠点機能を拡充する形とはいえ、徳島に移るのは研究業務など一部だけだ。国会対応や消費者行政の司令塔といった業務の大半は東京に残る。実態は、東京との「両輪」には程遠い。

 徳島の拠点では、県内全高校での消費者教育や障害者の消費行動調査などに取り組んできた。内閣府の消費者委員会は今年まとめた報告書で「全国の自治体に展開できる可能性があり、消費者行政の進化に寄与する」と一定評価している。

 一方、消費者庁側は「監督対象の企業が首都圏に集まっており、移転すると機能を十分果たせない」と抵抗し続けた。徳島での試験業務が、全面移転の可否を判断するのに十分な内容だったのかも疑問に思えてくる。

 政府が地方創生に向けた総合戦略で省庁や国の研究機関を地方に移す方針を打ち出したのは14年末のことだ。実現すれば職員らの移住や企業の拠点開設が見込まれるため、42道府県が計69機関の移転を提案した。

 だが、各省庁の反対で、最終的に全面移転されるのは京都に移る文化庁だけになりそうだ。

 東京を離れれば仕事にならない-。消費者庁に限らず、省庁が移転に反対する理由である。霞が関の意識が一極集中から抜け出せないようでは、企業などの地方移転も進まない。安倍晋三首相はこうした局面でこそ指導力を発揮し、政権の看板政策を実のあるものにすべきだ。

 政府は23年度中に省庁移転の課題を総括し、その後の対応を決めるという。情報通信技術などの進展で解決できる問題もあるだろう。省庁移転の旗を降ろすのは、まだ早い。

社説の最新
もっと見る

天気(10月21日)

  • 24℃
  • 18℃
  • 30%

  • 22℃
  • 12℃
  • 20%

  • 25℃
  • 16℃
  • 50%

  • 24℃
  • 15℃
  • 40%

お知らせ