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 市民や学生による大規模デモで揺れる香港で、政府トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官が、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を表明した。

 6月から繰り広げられている改正案への激しい抗議活動は一つの節目を迎えたと言える。しかし香港政府の決断は、遅きに失した。

 混乱の長期化により、市民の要求は改正案の撤回にとどまらなくなっている。警察の「暴力」を調べる独立調査委員会の設置や民主的な普通選挙の実現、逮捕されたデモ参加者の釈放などの4項目が加わった。林鄭氏はこれらに応じない方針を強調し、民主派団体は「闘争を続ける」との声明を出した。

 市民側は「一国二制度」による政治的な自由を死守しようと身をていして抗議運動に臨んでいる。その点に明確な回答を示さねば、収束は見通せないことを、香港政府は認識すべきだ。

 抗議運動は22年前の香港返還以来最大規模となった。香港政府の硬直した対応の背景には、譲歩を許さない中国の習近平指導部の強硬姿勢がうかがえる。

 態度が一変したのは国際社会の批判とともに、来月1日に迫った中国建国70年の記念行事を意識してのことだろう。

 懸念されるのは、今後も市民らの行動が沈静化しない事態だ。残る要求4項目を巡って、香港政府との対立が激化する恐れがある。建国記念行事が終われば、中国が態度を硬化させる可能性も否めない。

 習指導部は既に、香港と隣接する広東省深●に武装警察部隊を駐留させ、実力行使を示唆している。事実上の戒厳令である「緊急状況規則条例」を香港政府が発動することも取り沙汰される。国家権力が市民を弾圧した30年前の天安門事件の惨劇を繰り返すことは、断じて容認できない。

 林鄭氏はきのう、政府と市民の対話の枠組みづくりを改めて提起し、「香港が直面している難局から一歩踏み出すことを望む」と訴えた。

 そのためには市民と誠実に向き合い、自由で暮らしやすい香港を取り戻すために政府として何をするべきかを省みなければならない。

※●は「土」の右に「川」

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