社説

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 展望を描けない中、どれだけの意味があったのか。

 安倍晋三首相が、ロシアのプーチン大統領とウラジオストクで会談した。これで27回目だ。肝心の北方領土問題を含む平和条約締結交渉については協議継続を申し合わせたにとどまり、進展はなかった。

 昨年11月の会談では、歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記した日ソ共同宣言を基礎に条約交渉を加速させることを決めたが、1ミリも進んでいないのが実情ではないか。首相は今回、仕切り直しを図ったが、見えてくるのは合意に至る道筋の険しさばかりだ。

 プーチン氏は会談に先立ち、色丹島の水産加工場の稼働式典にビデオ中継で参加した。8月にはメドベージェフ首相が択捉島を訪問している。領土交渉を尻目に実効支配を誇示する行為で、信頼関係にも傷を付けかねない。首相は今回、日本の立場を伝えたというが、もっと強く抗議の意志を示すべきだった。

 今回、北方四島での共同経済活動を早期に具体化することでは一致したが、他の分野でプーチン氏から前向きな発言はほとんどない。経済先行で領土問題が置き去りになりかねない。

 北方領土を巡るロシアの世論調査では、日本への引き渡しに7割程度が反対している。支持率低迷に悩むプーチン氏が領土問題で歩み寄ろうとはしないだろう。

 米ロ関係の悪化を意識して、北方領土を返還すれば日米安全保障条約に基づき米軍が戦力を配備するのではとの懸念も示唆した。ロシア側が領土問題を正面から取り上げようとしない中で会談を重ねても、単なるパフォーマンスに終わるだけだ。

 首相は、プーチン氏との個人的な信頼関係や共同経済活動の推進を掲げて領土問題を解決し、平和条約を締結することを目指してきた。従来の4島返還から、歯舞と色丹の2島返還にかじを切ったとの見方もある。だがそうした戦略は、もはや限界が見えてきた。

 両首脳は11月にチリで再会談することで合意したが、現状ではめぼしい成果を得られるとは考えられない。会談はいったん休止して、戦略を一から練り直すべきだ。

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