社説

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 長崎県有明海の国営諫早湾干拓事業をめぐる混迷は、さらに長期化することになった。

 湾内を閉め切った潮受け堤防の排水門について、漁業者の訴えを受けて「開けるべき」とした判決と、営農者の立場から「開門せず」とした判決が、複数の裁判所で出されている。

 いずれも国が履行の義務を負う、矛盾した形である。

 問題を複雑にしている最大の要因は、真逆の司法判断がそれぞれ確定していることだ。

 そこへきのう最高裁が新たな判断を示した。国の主張に沿って「開門」の確定判決の事実上の無効化を認めた福岡高裁の判決を「審理を尽くしていない」として破棄したのである。問題はより一層複雑化した。

 国は途中で巨大事業を見直す検討もせず、結果的に「恵みの海」を「争いの海」にした。その罪深さを直視すべきだ。

 漁業者は、水門締め切りで漁獲量が減るなどの影響を受けたとし、原因調査のための開門を求めている。一方、干拓地には既に約670ヘクタールの農地が整備され、営農者は「開門すれば塩害が起きる」などと反対する。

 長崎や佐賀地裁などは訴えた側の損害を認定し、水門の開閉を命じてきた。もはや個別に白黒をつけて決着するような問題ではなくなっている。

 最高裁には解決の大枠を示す判断が期待された。だが破棄、差し戻しによって、確定判決に基づき漁業者側が「開門」を申し立てることができるか、福岡高裁で改めて審理される。

 同高裁は2010年に開門を命じており、当時の民主党政権が上告を断念した経緯がある。その後、国は開門するまで漁業者に1日90万円の制裁金を支払う義務も負ったが、同高裁は昨年、「共同漁業権は消滅し、開門請求権も失われた」として制裁金支払いを停止した。

 この判断も差し戻し審で見直されることになる。

 一方で最高裁は将来の「開門せず」の判断統一に含みを残した。忘れてはならないのは、漁業者も営農者も政策に翻弄(ほんろう)された「被害者」であることだ。

 国は裁判と別に、双方との誠実な話し合いを通して、当事者の納得が得られる解決の道を真剣に探らねばならない。

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