社説

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 東京都目黒区で5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが昨年3月に虐待死した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告の裁判員裁判が結審した。

 検察側は「命を守る親として最低限の行動すら起こさなかった」と懲役11年を求刑した。

 公判では、傷害罪などで起訴された父親の雄大被告が娘にすさまじい暴力を振るい、優里被告がそれを容認していた状況が明らかになった。

 わずか5歳の女児は十分な食事を与えられず、理不尽な量の勉強や運動を強要され、できなければさらに虐待を受けた。

 母親はなぜ止められなかったのか-。そうした思いがぬぐえない。

 「あしたはできるようにするから おねがいゆるして」と書いたメモが読み上げられた。結愛ちゃんの痛みや恐怖、それでも頑張ろうとした気持ちを想像すると、胸が締めつけられる。

 ただ、見過ごせない点がある。優里被告も夫の雄大被告からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたことだ。

 「夫の命令は絶対でロボットのように言うことを聞くのに必死だった」「夫の報復が怖くて警察に通報できなかった」と法廷で述べている。夫から連日、長時間説教されるなど追い詰められていたとされる。

 DVは子どもへの虐待を伴う場合が多い。千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛(みあ)さんが虐待死した事件でも、母親は夫からDVを受けていた。

 父親が加害者であれば、母子ともに保護し、支援するシステムが求められる。家庭内の暴力を一体的に扱う窓口を設けるなど、行政は実効ある態勢づくりを急がねばならない。

 「極限状態にあるDV被害者に、虐待への防波堤の役割を担わせるのは酷だ」との指摘が支援団体から上がっている。重く受け止める必要がある。

 これらの事件では児童相談所や行政、警察などの連携不足があらわになった。先日も鹿児島県出水市で4歳女児が死亡し、体のあざの情報を県中央児童相談所と市が共有していないなどの連携不全が明るみに出た。

 目の前のSOSをキャッチし、救うには、反省と教訓を着実に生かすしか道はない。

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