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 やはり対等な交渉は望むべくもなかった。安倍晋三首相とトランプ米大統領が合意文書に署名した、日米貿易協定だ。

 日本は米国産のコメに無関税枠は設けず「聖域」は死守したが、牛肉や豚肉などで環太平洋連携協定(TPP)と同水準の関税撤廃や削減を決めた。一方、TPP最大の恩恵と言われた日本製自動車や関連部品への関税撤廃は見送られた。

 首相は「ウィンウィン(共存共栄)の結論」と述べた。しかし双方の勝ち取った内容には大きな開きがある。

 来年の大統領選で再選を目指すトランプ氏は功を焦っていた。日本は有利な立場だったのに、日米安保条約への不満をちらつかせるトランプ氏の戦術に押し切られた形だ。

 自動車関連の関税は継続協議となる見通しだが、米議会はサービス分野も含めた包括協定の締結を求めている。日本政府は国益を損なわないための戦略を練り直さねばならない。

 貿易協定を結ぶ際に関税撤廃を求める世界貿易機関(WTO)のルールと整合性がとれなくなる点も問題だ。日本がこれまで各国と結んだ協定は、品目数や金額ベースで90%程度まで撤廃率を引き上げている。今回の協定で、米国の撤廃率は65%以下にとどまる。

 自動車関税を継続協議とすることで、ルール適合への努力を促すのが日本側の思惑とされる。しかし撤廃率を高めるよう努力すべきは、米国である。

 米国は「自国第一主義」を掲げてTPPを脱退したが、農産物など日本向け主力品目のほぼ全てでTPPと同水準の市場開放を手に入れた。多国間の枠組みより、2国間の方が有利に取引できる-。今回の協定がトランプ氏の持論を強固にし、国際協調への関心を一層遠のかせるのではと懸念する。

 責任は、米国ペースの交渉を許した日本側にもある。世界に保護主義の暗雲が垂れ込める。「自由貿易の旗手」を自認するなら、関税撤廃を米国に強い姿勢で求め続けるべきだ。

 米国産農産物の市場開放は8千億円弱に達し、国内農家などへの影響は必至だ。10月から始まる臨時国会で国民への説明責任を果たさねばならない。

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