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 愛知県の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に対し、文化庁が補助金約7800万円を交付しないと発表した。いったん内定した判断を取り消す、異例の対応である。

 元従軍慰安婦を象徴する少女像などを展示した関連の企画展「表現の不自由展・その後」は脅迫や抗議が殺到し、わずか3日で中止になった。ただ、芸術祭は国内外のアーティスト約80組が参加し、10月14日までの日程で開催されている。

 物議を醸した「不自由展」の予算は420万円で、芸術祭全体の0・3%にすぎない。文化庁は事業継続性など必要な情報が申告されていなかった「手続きの不備」を理由とするが、それなら指摘すれば済むことだ。

 補助金を全て取り消す措置は行き過ぎというしかない。

 「不自由展」では少女像のほかに、昭和天皇の肖像を含む映像作品などが展示されていた。過去の美術展などで非公開とされた作品を通して、憲法21条が保障する「表現の自由」の現状を考える狙いがあった。

 だが関係者は展示中止を求める電話などの対応に追われた。「ガソリン携行缶を持って行く」という脅迫ファクスを送り付けた男が逮捕、起訴されるなど、抗議行動が過激化する中で、展示は中止に追い込まれた。

 問題を複雑にした責任は、河村たかし名古屋市長ら「少女像の撤去」などを求めた政治家らの言動にもある。

 菅義偉官房長官も「補助金の交付決定では事実関係を確認、精査した上で適切に対応したい」と、内定の見直しに含みを持たせる発言をしていた。

 文化庁が政治家や閣僚らの意向に沿って判断したとすれば、表現の自由に介入する「あしき前例」を重ねたことになる。

 萩生田光一文部科学相は、「不自由展」の内容は補助金の不交付決定に影響していないと釈明する。しかし大村秀章・愛知県知事は「憲法の重大な侵害」として裁判で争う構えだ。

 大村知事は条件を整えて「不自由展」を再開する考えも示している。文化庁も「文化芸術立国」を掲げるのであれば、強権的な対応でなく、国際的な芸術祭をいかに守るか、一緒になって知恵を絞るべきだろう。

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