社説

  • 印刷

 消費税率が、あす10月1日から10%に引き上げられる。1989年の3%に始まり、30年間で三たびの改定を重ねてついに2けたの大台に乗った。

 生活基盤を支える社会保障に必要な財源は、国民全体で薄く、広く負担する。それが増税の目的だが、家計の実感では10%を「薄い」とは言いがたい。

 だが、高齢化で社会保障の担い手が減り続ける現状を見れば、さらなる引き上げを全く考えないのも楽観的すぎる。

 生活基盤を支えるために消費税が引き上げられ、暮らしを圧迫する。この矛盾を解消する手だてを模索する必要がある。

      ◇

 国税の柱である消費税、所得税、法人税の税収の推移を見ると、消費税の安定ぶりは際立っている。所得税収と法人税収は一般に景気に左右され、変動が大きい。バブル絶頂期の90年代初期に比べ、現在はいずれの税収も2割以上減少した。

 一方で、消費税収の変動幅は小さい。リーマン・ショックで景気が冷え込んだ2008年でも、前年から3%減で踏みとどまっている。

 確実に見込める税収を、すべての国民に関わる社会保障に充てる。財源の確保のみを考えれば理にかなう考え方といえる。

目指す社会の姿描き

 留意すべきは、所得税収と法人税収の減少には景気以外の要因も含まれる点だ。

 法人税の基本税率は昭和末期の43・3%から引き下げを重ね、現在は23・2%となった。日本企業の国際競争力を高めるなどの理由がある。所得税の最高税率も同様に70%から45%へ低下している。

 研究開発や投資促進などさまざまな名目の優遇税制で、大企業の実質的な負担はさらに軽減されているとの指摘もある。

 税制を考える際には、時代の変化に対応し、目指す社会の姿を描くことが欠かせない。法人税や所得税の税率引き下げには、競争を促し、勝者を遇して国力を高めようとする政府の意向が透けて見える。

 しかし今後の日本社会は、高齢者人口の比重が高まる。非正規やフリーランスなど、不安定な職に就く人もますます増えていくだろう。

 その結果、同世代の中でも格差が広がり、現役世代が高齢者を支える社会保障の前提が大きく揺らぐ可能性がある。

 消費税の「薄く、広く」は、富裕層も低所得者も同じ額の税を支払うことを意味する。低所得者ほど税負担が重くなるのは構造的な欠陥だ。

 重要なのは「薄く、広く」だけでなく、「能力に応じて負担する」ことではないか。

 所得が増えるほど負担が増す税を社会保障の財源に充てれば、格差縮小にも結びつく。

 7月の参院選では、消費税引き上げに反対する多くの野党が代替策として法人税引き上げなどを掲げた。そこで試算をしてみたい。

 軽減税率分を差し引けば、今回の消費税率引き上げによる増収は4・6兆円になる。

 一方で19年度予算は、法人税と所得税で計32・8兆円の税収を見込む。

 単純計算では、法人税収と所得税収が合わせて14%増えれば、今回の消費税増税分を賄うことは可能だ。一律に引き上げるのではなく、高所得者に限定して税率を改定するなど工夫の余地はあるだろう。

世代間の公平も保て

 ただこの試算は、あくまで現段階の数字によるものだ。内閣府のデータでは、団塊の世代が後期高齢者となる25年には、社会保障費の公費負担が今より約10兆円拡大する。

 安倍晋三首相は今年7月の参院選に臨み、10年間は消費税率を10%から上げる必要はないと発言した。政権発足以来の税収の伸びを根拠とし、今後も経済成長が続くという前提だ。

 しかし10兆円を賄うには、消費税率10%分だけでは足りない。他の税や社会保険料の引き上げ、国債発行などで財源を確保する必要がある。

 連立政権を組む公明党から批判され、首相は発言をトーンダウンさせたが、長期的な視点で社会保障財源のあり方を考える契機とすべきではないか。

 そもそも税収を大きく上回る予算を組み、借金で穴埋めする財政運営を続ける限り、税収が増えても赤字が膨らみ続ける。そこから改めるべきだ。

 税制を考える際には、世代間の公平を保つ視点も欠かせない。増え続ける社会保障費を手当てする道筋を描くのは、今を生きる世代の責務といえる。

 今回の消費税率引き上げでは、初めて軽減税率とポイント還元が導入された。

 政府は負担緩和を掲げているが、内容の複雑さや政府の対応の拙速さから、国民の間に疑問や混乱が広がっている。

 見失ってはならないのは、税の制度と使い道は主権者の国民が決めるという民主主義の大原則だ。「10%の先」に目を向け、持続的な社会保障と財政のあり方を考え続けたい。

社説の最新
もっと見る

天気(11月16日)

  • 18℃
  • ---℃
  • 20%

  • 19℃
  • ---℃
  • 40%

  • 18℃
  • ---℃
  • 10%

  • 19℃
  • ---℃
  • 10%

お知らせ