社説

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 批判された側がなじり返すことを「逆(さか)ねじを食わせる」という。今風にいえば「逆ギレ」だ。

 顧客に不利益な内容と知りつつ、かんぽ生命保険を不正販売していた日本郵政グループが、問題を報じたNHKに抗議文を送った振る舞いは、典型的な逆ギレと映る。

 耳を疑うのは、NHKの最高意思決定機関である経営委員会が「企業統治の強化を」などと求める再三の抗議を受け入れ、最高責任者の上田良一会長に厳重注意したことだ。

 会長も会長である。日本郵政に文書で事実上の謝罪をした。不正を追及する相手にトップが頭を下げる。これでは報道や番組制作の現場で頑張る職員らの立つ瀬がない。

 最後は日本郵政が経営委に感謝の文書を送ったという「落ち」までついた。驚き、あきれるしかない。

 報道が誤りならともかく、保険料の二重徴収など顧客の不利益が疑われる生保の契約は18万3千件に上っている。日本郵政による調査の中間報告でも、法令違反や社内規定違反が6千件以上確認され、件数はさらに膨れ上がる見通しだ。

 事態を重く見た金融庁は先月から立ち入り検査に踏み切った。約2万6千人もの顧客が二重払い分の返金など不利益解消を求めている。社内の法令順守を徹底し信頼回復に全力を挙げるのが筋だろう。報道への逆ギレはお門違いというしかない。

 日本郵政グループの経営権は今も政府が握る。持ち株会社である日本郵政の副社長は、NHKの監督官庁である総務省の元事務次官が務め、幹部に同省出身者も多い。

 日本郵政がNHKに強く迫り、NHK側が抗議を受け入れた背後には、中央省庁との力関係が透ける。

 NHKは昨年4月に不正を報じる番組を放送したが、抗議を受けた後に情報提供を呼び掛けるツイッターの投稿を削除した。続編番組の放送も今年7月まで1年以上遅れた。

 NHKは「抗議とは無関係」とするが、経営委による会長の厳重注意が影響したとみるのが自然だ。

 NHKの会長は業務全般を統括する。一方で放送法は「番組編集の自由」をうたっており、個々の番組制作は現場の判断に委ねられている。経営委員の番組編集への介入も法で禁じられている。

 憲法が保障する「表現の自由」も踏まえて現場の萎縮につながる対応を避けるのが、経営委や会長の責務である。外部の圧力に屈するようでは公共放送への信頼が揺らぐ。

 なぜか経営委はNHK会長に対する厳重注意の経緯を議事録に残していない。後ろめたさを感じていたのなら、踏みとどまる良識と自覚を持つべきだった。

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