社説

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 日本郵政グループ傘下のかんぽ生命保険で顧客に不利益を与えた疑いがある約18万3千件の契約について、外部の弁護士で構成する特別調査委員会が中間報告を発表した。

 法令や社内規定に触れる疑いがある契約は6327件に達し、その2割強にあたる約1400件では法令違反の疑いがあった。不利益解消を求める顧客は2万6千人を超える。

 民間の金融機関で顧客との取引にこれだけ違法の疑いがかかれば、経営陣は株主などから即刻退陣を迫られるところだ。

 しかし会見した日本郵政とかんぽ生命、保険販売拠点の郵便局を統括する日本郵便の3社トップが、いずれも辞任を否定したのは信じがたい。顧客を偽ってまで営業成績を伸ばそうとした組織風土を刷新するには、経営陣の交代と企業統治の見直しが不可欠である。

 特別調査委は中間報告で、「顧客本位」の意識が現場まで十分浸透していない点などを不正販売の要因に挙げた。

 ノルマを過度に重視した人事評価や給与体系▽保険販売が郵便局頼みで不正があっても販路を変えられないかんぽ生命と日本郵便の関係▽経営陣に報告する過程での不正の矮小(わいしょう)化-。組織設計や企業統治に踏み込んで問題点を指摘している。

 日本郵政の長門正貢(ながとまさつぐ)社長は会見で「持ち株会社としての問題点は、取締役会に情報が全く上がってきていなかったこと」と述べた。

 しかしグループ全体の正社員だけで21万人以上にのぼる巨大企業で、経営陣が現場の情報に疎くなることは想定内である。あらかじめ積極的に情報を吸い上げる仕組みが必要だったはずだ。トップの発言としては責任回避のようにも受け取れる。

 不正販売の存在は昨年、NHKが番組内で報じた。しかし日本郵政は社内調査などをせず、NHK上層部や経営委員会に抗議した。

 民営化したとはいえ、政府が大株主であることにあぐらをかき、自らを省みようとしない。まずその企業体質を、改めねばならない。

 8月に始まった不正販売の調査は、まだ全体の4割弱にとどまる。調査が進むにつれ、違法契約の件数がさらに増えるのは間違いない。

 契約者からの申告を調査のベースにしているが、高齢者が多いことを考えれば、本来は個別に訪問し、不利益な契約内容になっていないか一件一件調べるのが筋だろう。

 銀行や信用金庫などの支店がなく、預金や保険をはじめ金融インフラを郵便局に依存している地域は全国に数多い。

 調査と並行して再発防止策を講じ信頼を取り戻すのが急務だ。

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