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 助かる命だったのでは-。遺族の思いを、司法判断が裏付けた。

 東日本大震災の津波で亡くなった宮城県石巻市立大川小学校の児童のうち23人の遺族が、市と県に約23億円の損害賠償を求めた裁判で、最高裁は行政側の上告を退けた。約14億3600万円の支払いを命じた二審の仙台高裁判決が確定した。

 津波被害を巡り、事前の防災体制の不備による賠償を命じた判決が最高裁で確定するのは初めてだ。各地で争われている同種の裁判にも影響を与えることになる。

 一審の仙台地裁判決では、津波が来る直前の教職員の誘導にのみ過失を認めた。二審判決は、学校側が危機管理マニュアルに避難経路などを定めなかったとして、組織的過失も認定した。

 いずれも、教師に津波の予見は困難だったとして、県と市が上級審の判断を仰いだ経緯がある。だが今回、最高裁の裁判官5人は一致して上告棄却を決めた。

 子どもたちの命を守るための手だてを尽くす責務があることを、全国の教育機関は改めて認識しなければならない。

 判決によると、地震発生後に大川小の児童は教員らの指示で校庭に避難し40分以上とどまった。高さ約7メートルの堤防付近に移動を始めた直後に川を遡上(そじょう)した津波に襲われた。

 県と市は、大川小が津波浸水予想区域の外にあったと主張した。しかし一審判決は、津波襲来と高台避難を市の広報車が学校付近を呼びかけながら通過しており「津波が予見できた」と指摘した。

 津波は地震発生から51分後に大川小に到達した。学校の裏山に直ちに避難していれば、多くの命が救われた可能性が高い。自力で山の斜面に難を逃れた児童もいた。

 最高裁に県などが上告した際、村井嘉浩知事は「全国の学校現場に大きな影響を及ぼす」と述べた。学校などが高度な防災義務を負うことへの抵抗感があったのだろう。

 留意すべきは多くの学校が、災害時には地域の避難所として住民の安全や安心を預かる役割も果たさねばならない点だ。

 教員や校長だけで防災力を向上させるのは限界がある。専門家の派遣などで行政が十分に支援し、地域とも連携して、防災力を高める取り組みが欠かせない。首長も含めて責任の重さを認識するべきだ。

 大川小は震災遺構として保存が決まった。被災校舎では遺族らが語り部活動を続けている。

 教訓を継承して全国の学校が備えを固め、次の大災害で悲劇を繰り返さないことが、教職員を含めて84人にのぼった尊い犠牲に報いる道だ。

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