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 総務省は、6月に始まったふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を引き続き除外すると決定した。

 第三者機関「国地方係争処理委員会」が、過去のルール違反を理由に除外するのは違法の恐れがあるとして再検討を勧告していた。だが、総務省は「適法だ」と真っ向から反論し、従わなかった。

 同市の千代松大耕市長は、「地方自治の根幹を大きく揺るがす」として除外の取り消しを求めて大阪高裁に提訴すると表明した。総務省と自治体の対立が、法廷闘争に発展する異例の事態である。

 裁判になれば対立は長期化し、市民サービスにも影響しかねない。司法に委ねる前に話し合いの場を設け、打開策を探るべきだった。

 係争委は、国と地方の関係を上下から対等に転換した1999年の地方自治法改正に伴い設置された。総務省の前身である旧自治省が国による自治への不当な介入を抑えるため、他省庁の抵抗を抑えて実現させた経緯がある。その旗振り役が「勧告に従う必要はない」と宣言したに等しく、影響は計り知れない。

 これまでの係争委は、米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡って国に異議を唱えた沖縄県の訴えを相次いで退けるなど十分に機能していなかった。国の不当性を認め市側に軍配を上げた今回は、本来の役割を発揮したまれな事例と言える。

 肝心の総務省が尊重しなければ、他省庁が不利な勧告に従わない言い訳にされる。地方側からも頼りにならないと見切りをつけられ、係争委の形骸化が一層進むのではないか。地方自治を萎縮させるあしき前例を、総務省自身がつくってしまった。

 総務省は再検討の結果、除外は裁量の範囲内と主張する。法律の根拠があれば、助言に従わない自治体に不利益な取り扱いをしてもよいとの見解も示した。国の意に沿わない自治体は罰則を科してでも従わせようとする強権的な姿勢であり、対等の原則を踏み外している。

 一方で、係争委は泉佐野市にも問題はあると指摘した。

 同市は2018年度、ネット通販のギフト券を見返りに全国トップの500億円近い寄付を獲得した。その裏で、税収を奪われ住民サービスに支障が出かねない市町村もある。

 多くの自治体が不公平感を募らせているのも事実だ。総務省の強硬姿勢の背景には、なりふり構わぬ寄付集めを認めれば、制度が崩壊するとの危機感があるのだろう。

 そもそも善意で地方を応援する制度のはずが、限られた税源の奪い合いで地方がますます疲弊する。その矛盾を直視し、返礼品廃止を含めて抜本的に制度を見直す必要がある。

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