社説

  • 印刷

 米国と中国が互いに高関税をかけ合う貿易摩擦に、改善の兆しが見え始めている。今月中旬、閣僚級協議を経てトランプ大統領が「第1段階の合意に達した」と発表した。

 追加関税の応酬は両国のみならず、世界経済全体にもダメージを与える。合意しやすい部分だけを取り上げて、実績を示すことで首脳同士の思惑が一致したと言える。

 一方でトランプ氏は、第2段階に向けた協議を早急に開始すると強調した。

 思い起こすのは今年6月、習近平国家主席との会談で協議継続を決めながら、わずか1カ月弱で手のひらを返したように追加関税に転じた経緯だ。このまま米中が矛を収められるのか、注視する必要がある。

 今回の合意では、中国が米国産農産物の輸入を増やす。その代わりに米国は、15日に予定していた制裁関税引き上げを見送る。

 中国側は、今年になり既に米国産大豆2千万トンを購入し今後もさらに拡大するとアピールしている。「素晴らしいディール(取引)」だとトランプ氏も自画自賛である。

 留意すべきは、合意内容に盛り込まれていない点だ。

 米国はこれまでの協議で、国有企業への補助金や知的財産権侵害、技術移転の強要などについて、中国に是正を求めてきた。日本や欧州各国も同様に問題視しているが、今回の合意で、米中から具体的な言及はなかった。

 国と企業が表裏一体となった独自の経済体制に、米国が厳しい視線を向けているのは間違いない。安全保障上の脅威を理由に中国通信機器大手への輸出禁止措置を発動したのも、その一環と言える。

 中国にとってはいずれも国家統治の根幹に関わるだけに、米国との合意点を見いだすのは決して容易ではないだろう。

 両国は11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて署名するため、合意内容の文書化を急いでいる。細部を詰める段階で、改めて意見が衝突する可能性もゼロではない。

 懸念するのは、そこでトランプ氏が再び強硬姿勢に転じることだ。

 国際通貨基金(IMF)は、2019年の世界経済の成長予測を下方修正した。リーマン・ショック後では最も低く、その要因には米中摩擦を挙げている。

 両国が初めて追加関税を発動して1年3カ月が過ぎた。米国の貿易赤字削減にも中国の構造改革にも大きな進展がないまま、世界経済が失速の渦に巻き込まれていく。

 その影響は自国にも跳ね返ることを、米中の首脳は自覚するべきだ。

社説の最新
もっと見る

天気(12月16日)

  • 14℃
  • ---℃
  • 10%

  • 14℃
  • ---℃
  • 0%

  • 15℃
  • ---℃
  • 10%

  • 14℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ