社説

  • 印刷

 教育の機会均等に責任を負う行政のトップとして許しがたい発言だ。

 萩生田光一文部科学相が、2020年度から大学入試共通テストで導入される英語の民間検定試験で「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」とテレビ番組で述べた。

 民間試験を巡っては、家計状況や居住地によって不公平が生じるとの懸念が根強い。その点を質問された際の答えである。ネット上で「貧乏人は高望みするなということか」といった反発が広がり、きのうになって発言を撤回した。

 撤回して済む問題ではない。受験を控えた高校生や保護者の不安をあおった責任は重い。批判を真摯(しんし)に受け止め、問題点の改善に全力を挙げるべきだ。当事者の不安解消に努めねばならない。

 英語の民間試験は、文科省が認定する6団体7種類から一定期間内に2回まで受けられる。受験料が2万円を超える試験があったり、会場が都市部に限られたりするため、都会に住む高所得世帯の生徒が有利になる可能性が指摘されている。

 萩生田氏は同番組で、裕福な家庭の子は練習のため何度も受けられるかもしれないと認めた上で、「『あいつ予備校に通ってずるい』というのと同じ」との見方も示した。経済事情による不公平は仕方ないといわんばかりだ。

 教育基本法は、憲法に基づき「国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならない」と定めている。その執行を担い、格差是正に努めるべき文科相にふさわしいのか、閣僚の資質を疑わざるを得ない。

 萩生田氏は今月初めにも、民間試験の活用方針が未定の大学が多いことに関連して「初年度は精度向上期間だ」と発言し、受験生を実験台にするつもりかと批判を浴びた。

 一連の発言は、萩生田氏の見識不足だけでなく、入試制度そのものが抱える不公平さをさらけ出す結果となった。懸念が解消されないまま導入に突き進めば、犠牲になるのは受験生である。

 全国高等学校長協会は、民間試験の問題点が解消される見通しが立たないなどとして開始の延期を求めている。導入見送りも含めて、再検討する機会ではないか。

 そんな中、河野太郎防衛相から相次ぐ台風被害に関連し「私はよく雨男と言われた。防衛相になってから既に台風は三つ」との発言が飛び出した。多くの死者・行方不明者が出ているというのに軽率すぎる。

 不安や苦しみに直面する人たちへの思いやりに欠ける点で、萩生田氏と共通する。安倍政権の緩みは極めて深刻だ。

社説の最新
もっと見る

天気(12月8日)

  • 12℃
  • 7℃
  • 20%

  • 9℃
  • 5℃
  • 50%

  • 13℃
  • 5℃
  • 0%

  • 12℃
  • 5℃
  • 20%

お知らせ