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 滋賀県東近江市の病院で2003年、患者の呼吸器を外して殺害したとして殺人罪で懲役12年の刑に服した元看護助手西山美香さん(39)の再審公判で、検察側が新たな有罪の立証をしない方針を弁護団に示した。

 自白による立証は諦め、弁護団の証拠請求にも可能な限り同意するという。西山さんが無罪となる公算が大きくなった。

 大阪高裁の再審開始決定から1年10カ月余りたっている。検察側が再審決定を不服として特別抗告し、確定に時間がかかったためだ。最高裁が抗告を退けた後も、全面的に有罪を主張する方針を譲らなかった。

 一転して事実上の敗北を宣言した格好だが、理由は明らかにしていない。メンツにこだわり、無用に再審開始を先延ばしにしたとの批判は免れない。

 西山さんは捜査段階で「呼吸器を外した」と自白した。公判で否認に転じたが、酸素の途絶による急性心停止が死因と認定され、07年に有罪が確定した。

 2度目の再審請求審で大阪高裁は、弁護側が新証拠として提出した医師の鑑定書などに基づき、患者が不整脈で自然死した可能性に言及した。さらに、有罪確定の根拠となった自白について「めまぐるしい変遷があり体験に基づく供述ではない疑いがある」と信用性を否定した。

 再審開始は「疑わしきは被告人の利益に」の原則に沿った判断だったといえる。

 検察側は今回、弁護団の申請を受け、開示していなかった供述調書など約350点の証拠リストを提示した。再審が請求された時点でこれらを洗い直していれば、早い段階で自白との矛盾に気づけたのではないか。

 自らの過ちを認めようとしない捜査姿勢が多くの冤罪(えんざい)事件を生む。同じ構図がここでも繰り返された。検察側が再審決定に不服を申し立てられる現行制度は冤罪防止の観点から問題がある。取り調べへの弁護士の立ち会いも実現させるべきだ。

 検察側は年度内の再審公判と即時結審を求めている。自ら求刑放棄や無罪論告をし、明確に過ちを認めるのが筋である。

 遅すぎたとはいえ、西山さんの名誉と穏やかな生活を取り戻すために、一日でも早く無罪を確定する必要がある。

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