社説

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 国際秩序が揺らぎ、国際テロや海上交通の安全確保など、一国では対応困難な課題が顕在化している。

 2019年版の防衛白書は、日本を取り巻く安全保障環境の現状についてこのように指摘した。

 日本周辺では米国と中国、ロシアなどが軍事的ににらみ合う。間隙(かんげき)を縫うように北朝鮮はミサイル発射を繰り返す。不測の事態の回避には関係国との連携が欠かせない。

 現状認識はその通りだろう。肝心なのは、「困難な課題」を解決するために何をするかである。

 その点で、白書は手詰まり感が否めない内容となった。

 韓国との関係は「戦後最悪」とされ、機密情報を共有する軍事情報包括保護協定は破綻寸前の状況だ。

 政治、経済面で関係改善が期待される中国も、沖縄県・尖閣諸島周辺海域では艦船の侵入を続けている。ロシアも首脳会談が演出する「親密さ」と裏腹に、北方領土で軍事力を着々と増強させている。

 周囲の多様なリスクと向き合うのに、米国との同盟だけがよりどころとなっているのが実情だろう。

 その米国も、トランプ大統領が日米安保条約を「不公平」とやり玉に挙げ、在日米軍の駐留経費負担増を再三、求めている。そうした中で日本が気をもんでいるのは、北朝鮮に対する米国との温度差だ。

 米朝協議を優先するトランプ氏は、短距離のミサイル発射を問題視しない姿勢を示している。日本の排他的経済水域に落下した弾道ミサイルについても「国連決議違反」と非難した日本との違いが際立った。

 北朝鮮への対処には韓国との共同歩調が重要になる。だが、韓国軍艦船が自衛隊機に火器管制レーダーを照射する問題が起き、日韓とも相手国の式典に艦船派遣を見送るなど、防衛当局の関係も後退している。

 白書は「韓国側の否定的な対応が影響を及ぼしている」と批判する。国際的な安保協力に関する項目でも、昨年は2番目に記載した韓国の順番を4番目に引き下げた。

 一方で「韓国と幅広い分野での防衛協力や連携の基盤確立に努める」とも書いている。だが、そのための具体策は「韓国に適切な対応を求めていく」と述べるにとどまる。

 安倍晋三首相は先日、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」参列のため来日した韓国の李洛淵(イナギョン)首相と会談したが、元徴用工訴訟問題などで両者の主張は平行線をたどった。

 日本の安保は、政府同士のいがみ合いで視界不良の状態になりつつある。日韓が背を向け合って利を得るのは北朝鮮や中国、ロシアだろう。政治的な対立と安保を切り離す、冷静な対応を求めたい。

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