社説

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 仕事による精神的ストレスの影響が危機的なレベルになっている。

 政府の「過労死等防止対策白書」によると、2018年度の労災請求は2697件に上り、00年度以降で最多となった。兵庫県内は44件で全国で4番目に多かった。

 精神障害の件数が数字を押し上げた。1820件と全体の約7割を占め、業種別では介護、医療、運輸の順に多かった。脳・心臓疾患は877件だった。

 見過ごせないのは、自殺者の総数が減少傾向にあるにもかかわらず、仕事上の問題を苦に命を絶つケースは増えていることだ。

 18年度は2018人に上り、2年連続で増加した。全自殺者に占める割合は過去最高の9・7%になった。動機は「仕事疲れ」が最も多く、「職場の人間関係」が続いた。

 緊急事態といえる。人手不足が幅広い業種で常態化し、働く人が心身ともに追い詰められる危険は高まっている。

 労働者の健康と安全を守る観点から、政府は実効ある対策に取り組まねばならない。企業の健全な競争力向上を促すためにも、長時間労働の是正を急ぐべきだ。

 政府は週60時間以上働く人の割合を、20年までに全雇用者の5%以下にする目標を掲げる。18年度は6・9%に当たる397万人となり、前年度より35万人減ったと「成果」を強調している。

 しかし国の「過労死ライン」は月80時間の残業だ。週60時間の労働時間は月換算するとこのラインを超える。政府の目標は緩すぎる。

 白書は今回、建設業とメディア業界を取り上げ、15年までの5年間の過労自殺を分析した。

 建設業では精神障害を患った現場監督59人のうち、ほぼ半数の30人が自殺していた。メディアでは自殺者4人の全員が20代だった。

 今年4月に大企業から適用された働き方改革は、繁忙期に月100時間未満まで働かせることができる。建設業とトラックなどの自動車運転業務は、罰則付きの時間外労働上限規制の適用が5年間猶予された。

 さらなる残業規制を検討する必要があるだろう。経営側には先端技術の活用などで生産性向上への一層の取り組みを求めたい。

 労災請求が増えている半面、労災が認められる件数が減っている点も気がかりだ。

 18年度に労災として認定されたのは、請求2697件に対して703件。前年度より56件少なく、認定率は26%ほどだ。

 会社員の副業解禁など働き方が変わってきた。労災認定の基準見直しも併せて進める必要がある。

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