社説

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 国会で審議中の日米貿易協定の承認案が衆院で可決され、参院で審議入りした。安倍晋三首相は日米双方に「ウィンウィン(相互利益)」と成果を誇るが、野党は国益を損なう内容だとして攻勢を強めている。

 発効済みの環太平洋連携協定(TPP)では国会審議が150時間に及んだが、今回は衆院外務委員会の審議が約11時間にとどまった。

 来年1月発効を目指す与党側は、12月9日の会期末までに国会承認を得る工程表を描く。参院審議も駆け足で終わらせる可能性がある。超大国との1対1の交渉が本当に「ウィンウィン」だったのか。審議を重ね効果を検証するべきだ。

 協定で、日本は米国産農産物に対して、TPPと同水準の関税撤廃や引き下げを決めた。コメの無関税枠は認めなかった。

 一方、米国は日本の工業製品の多くで関税を撤廃したが、輸出の核となる自動車とその関連部品は対象に含めなかった。

 米国は以前TPP協議に加わっていた際、自動車関税の撤廃を決めていた。それと比べれば、今回は日本が譲歩した感が否めない。

 政府は、自動車に追加関税を発動しないことを安倍首相がトランプ米大統領に直接確認した-と主張する。口約束が、どれほどの拘束力を持つのか。野党が会談の議事録を開示するよう求めるのは当然だ。

 農産物関税についても、協定の原文に米国が今後もさらなる引き下げを求める旨の記載がある点が論点になっている。政府は明確に回答せねばならない。

 参院審議のもう一つの焦点は、米国産の飼料用トウモロコシ250万トンを日本の民間企業が購入すると安倍首相が言明した点だ。

 国内のトウモロコシで害虫が発生し、被害拡大を見越して前倒しで輸入すると政府は説明する。だが実際は、大きな被害は発生していない。それなのに、倉庫代などを補助してまで輸入を促すのは理解に苦しむ。食料自給にも逆行する。

 来年は米大統領選が控える。よもや、貿易摩擦で中国向け輸出が落ちこんだ米国のトウモロコシ農家を救い、トランプ氏の支持固めを手伝う狙いではあるまい。

 そもそも協定の1月発効自体、米大統領選に向けたトランプ氏の実績づくりが目的だ。なぜ日本が忖度(そんたく)しなければならないのか。国民が納得できる説明が必要だ。

 期限ありきで強引に審議を進めることがあってはならない。

 与野党を超えて国会で疑問点を徹底的に究明し、今後の対米交渉を少しでも日本に有利に導くための一歩とするべきだ。

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