社説

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 社会通念の名の下で、従業員に「女らしさ」や「男らしさ」を押しつけていないだろうか。企業は再考するときである。

 労働組合の全国組織、連合が職場での服装や身だしなみのルールについてアンケートを行った。男女千人の有効回答を集計したところ、男女別の細かい規定がある実態が浮き彫りになった。

 決まりがあると答えたのは57%。宿泊、飲食サービス、金融などの業種が目立った。このうち23%は「男女で規定が異なる」と回答した。

 「男性は長ズボン、女性はスカート」「男性は黒、女性は花柄やピンクの服」「女性は化粧をしなければならない」「男性は長髪とピアスは禁止」-。内容は多岐にわたる。

 社内ルールがある人のうち、女性の靴のヒールの高さが決まっていると答えたのは19%に上った。中には体への負担が大きそうな「5~7センチ未満」を求める例もあった。

 職場でのヒール付きパンプスなどの着用を巡っては、強制に反対する運動「#KuToo(クートゥー)」が記憶に新しい。

 女性にのみヒール靴を履くことを命じれば性差別になり得る。しかも、腰痛や外反母趾(ぼし)といった健康被害を引き起こす恐れがある。早急に見直すべきだ。

 企業からは反論も上がっている。「お客さまが求めている」というのが代表例である。

 共同通信が今夏に行った企業アンケートによると、ヒール規定を持つ20社のうち、見直すと答えたのはわずか2社にとどまった。ほかの多くは「客に不快感を与えないため」にヒールの靴が望ましいと回答している。業種は航空や百貨店、ホテルなどだった。

 顧客を理由にしているが、あまりに「男性目線」が過ぎないか。

 靴に限らず、スカートや花柄の着用、化粧などのルールに違和感を抱く女性は少なくないはずだ。連合の調査では、服装の決まりがあると答えた割合は、女性の方が多かった。

 言い換えれば、女性はより「見た目」が重視される傾向にある、ということだろう。

 本人が望まないのに「らしさ」や「性別役割」を過度に求められれば、精神的な苦痛を感じるのは当然である。それは女性に限らない。

 性的指向や性自認への配慮は時代の趨勢(すうせい)でもある。働く者のやる気をそぎ、健康を害する恐れさえあるようなルールは、人材確保やハラスメント防止の観点からも、企業にマイナスに作用しかねない。

 従業員の意見を踏まえた規定の見直しが広がってほしい。労働組合の果たす役割も大きい。

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