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 どのような行為が職場でのパワーハラスメントに当たるのか、判断基準となる具体例を盛り込んだ国の指針が大筋でまとまった。

 ハラスメント規制法が今年5月に成立し、大企業は来年6月から、中小企業は2022年4月からパワハラ防止対策を取ることが義務付けられる。それを前に、厚生労働省の労働政策審議会が定義などを話し合ってきた。

 深刻なハラスメント被害は後を絶たない。議論のさなかにも、トヨタ自動車の男性社員が上司からのパワハラで自殺し、労災認定されていたことが明らかになった。

 労働者の4割がハラスメントを受けた経験を持つという調査結果も報告されている。実効ある防止策は待ったなしだ。

 企業からは「業務上必要な指導との線引きが難しい」と懸念する声が上がる。判断が難しいケースも考えられるが、働く者を守る規制法の原点に立つことが大前提だ。

 指針はパワハラを6類型に分けた。「身体的攻撃」「精神的攻撃」、集団無視などの「人間関係からの切り離し」、遂行不可能な仕事を強いる「過大な要求」、仕事を与えない「過小な要求」、私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」である。

 それぞれに、パワハラに該当する例と該当しない例を挙げた。気がかりなのは、拡大解釈の余地を残した表現が見られる点である。

 例えば「社会的ルールを欠いた言動を再三注意して、改善されない場合に強く注意」「能力に応じて一定程度業務量を軽減する」はパワハラに当たらないとしている。

 これでは抽象的で、ハラスメントと認定される範囲を狭めかねない。労働政策審議会で労働側委員が反発したのも理解できる。

 指針は一般からの意見を募り、年内をめどに正式決定される。国は問題となる事例を示し、企業が拡大解釈して責任逃れに使うようなことがないよう、監視する必要がある。

 積み残した課題も多い。

 指針の対象は企業の従業員に限定される。300万人以上とされるフリーランスや就職活動中の学生が受けるハラスメント、顧客からの悪質なクレームに担当者が苦しむカスタマーハラスメントへの対応は義務付けられていない。いずれも深刻な被害が報告されており、今後、対象拡大が望まれる。

 世界を見れば、日本のハラスメント規制の法整備は遅れている。このたびの規制法にはパワハラ行為自体の禁止は盛り込まれなかった。

 ハラスメントは放置すれば企業の競争力を阻害する。国と企業の本気度が問われている。

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