社説

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 地中海の島国マルタで、米国のブッシュ(父)大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が冷戦終結を宣言したのは、30年前の今の時期だ。

 世界を東西陣営に二分していた超大国の首脳が、不信を乗り越えて手を握った。それにより対立から「雪解け」へと流れが変わった。

 その1カ月前にはベルリンの壁がなくなり、2年後には当のソ連も崩壊した。協調と平和共存の時代の到来に期待が高まった。

 残念ながら、世界はそれと逆の方向に進んでいる。過激派のテロが新たな脅威となり、急速に台頭した中国が軍事面で米国と張り合う。

 ソ連を引き継いだロシアもプーチン大統領が20年近く権力を維持し、クリミア半島編入などで既存の秩序を無視する動きを見せる。

 「雪解け」から一転、争いが世界に拡散している状況だ。共存の新たな枠組みの構築に、国際社会は力を合わせなければならない。

 だが現実は、自由や民主主義など「共通の価値観」が大きく揺らいでいる。代わって独裁政治や強権支配が力を増してきた。自由貿易や国際協調に対抗して自国利益を優先する露骨な動きも目立つ。

 端的な例が、共産党一党支配のまま世界第2位の経済大国となった中国であり、「自国第一主義」を掲げる米トランプ政権である。

 寛容の精神で多くの難民を受け入れた欧州でも、難民排斥を声高に叫ぶ勢力が拡大している。地域の統合を目指す欧州連合(EU)も、英国の離脱問題で岐路に立つ。

 混迷が深まる中で、日本を含む先進国に求められているのは、世界をまとめる役割だろう。

 10年前に当時のオバマ米大統領が「核兵器を使用した唯一の核保有国として行動する道義的責任」を明言した際は、「核なき世界」の実現を望む声が盛り上がった。

 だが核軍縮は進まず、トランプ氏の登場で米国は態度を変える。旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を通告し、条約は8月に失効した。2年後に期限が迫る新戦略兵器削減条約(新START)の延長も棚上げ状態で、やはり失効の恐れがある。

 かつて米ソ首脳らの合意で切り開かれた道が今、新たな壁に突き当たっている。懸念されるのは、国際的な枠組みの外で核戦力を増強する中国との「新冷戦」に歯止めがかからず、緊張がさらに高まる事態だ。

 温暖化など地球規模の課題の対策は待ったなしである。大国がいがみ合うようでは国際連携は進展しない。人類共通の未来のため、米ロ中の首脳らはマルタ会談の精神に深く学び、歩み寄るべきである。

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