社説

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 アフガニスタンで医療・農業支援に取り組んできた中村哲(てつ)医師(73)が活動中に武装した男らに銃撃され、亡くなった。運転手ら5人も死亡し、待ち伏せされたとみられる。

 アフガンの大統領はテロと断定した。卑劣な犯行は断じて許せない。現地や日本だけでなく、国際社会からも憤りや非難の声が上がっている。

 中村さんは人生の多くをアフガンの復興支援にささげた。28年前に診療所を設け、2000年に大干ばつが起きてからは井戸や用水路建設による水の確保に取り組んだ。日本からの寄付などを元手に、1万5千ヘクタールを超す土地に緑をよみがえらせてきた。取り組みは高く評価され、アフガン政府から勲章や名誉市民権を授与されている。

 活動の母体は、福岡市に事務局を置く非政府組織(NGO)「ペシャワール会」で、現地代表を務め、人々とともに汗を流した。「和平には戦争でなく、貧困解決が不可欠だ」との信念を貫き、自分のことは二の次だった。だからこそ市民から慕われ、信頼された。

 「アフガンの恩人」が、なぜ命を落とさなくてはならなかったのか。一体誰が手を下したのか。多くの人がやり場のない怒りを抱えている。治安当局は犯人特定に全力を挙げるべきだ。

 アフガンでは、反政府勢力タリバンによるテロが続くほか、過激派組織「イスラム国」(IS)も展開し、治安悪化に歯止めがかからない。11年前にはペシャワール会の日本人スタッフが武装勢力に襲われ、凶弾に倒れている。

 ペシャワール会は事件後、日本人の派遣を制限してきたが中村さんだけは現地スタッフの陣頭指揮を続けてきた。並大抵の覚悟ではなかっただろう。

 大切なのは、その遺志を継ぐことだ。これまでの積み重ねを生かすためにも、活動を続ける必要がある。そのためには、現地の状況を慎重に見極めなければならない。

 「思いやりや愛情を持って、相手の身になって考えること。その気持ちを持っていれば、どこでも何とかなる」。中村さんの発言だ。「自国第一主義」が広がる世界で、大切にすべきメッセージが詰まっている。

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