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 阪神・淡路大震災は「災害弱者」の存在を浮き彫りにした。障害者や高齢者が避難できなかったり、避難所の劣悪な環境の中で命を落としたりする例が相次ぎ、災害関連死は900人を超えた。

 その後の東日本大震災や熊本地震、各地を襲った台風や豪雨でも、災害弱者の避難は大きな課題となっている。いまだ対策が十分とはいえないことを指し示している。

 巨大災害が頻発する時代になった。すべての住民の命を守るための取り組みを急がねばならない。

 重度障害者の木村英子参院議員が昨年11月、国土交通委員会の初質疑で指摘したのは、避難所となる学校などのバリアフリー化だった。車いすに乗る当事者として国会の場で問題を提起した意義は大きい。

 文部科学省が昨年、避難所指定され要配慮者の利用が見込まれる全国の公立学校を調べると、多目的トイレの設置は体育館で37・3%、校舎で65・2%、スロープなどで段差解消を図っているのは体育館で63・8%、校舎で66・6%にとどまった。

 25年前には、避難所に対応可能な通路やトイレがないため、自宅に戻る車いす利用者もあった。高齢者は避難所の段差に苦しんだ。

 同じ事態を繰り返さないためには、学校など避難所指定施設の改造を優先して進める必要がある。

 災害弱者を巡っては阪神・淡路発生翌年の1996年、国が障害者などの要援護者を対象に、必要な機能を持つ「福祉避難所」の概念を打ち出した。一般の避難所から対象者が移動する想定で各自治体が整備を進めているほか、神戸市はいち早く開設する「基幹福祉避難所」も新たに導入した。

 ただ、こうした避難先の存在は十分に周知されず、避難自体をためらう人はまだ多い。誰が、どこに、どうやって避難するかといった対策を、個々の事情に応じて練り上げることが重要である。

 2013年の法改正を踏まえた国の指針では、市町村や民生委員などを中心に本人と話し合って個別に避難計画を作るよう求めている。

 しかし策定率は全国的に低調で、兵庫県内は10・2%(昨年6月)にすぎない。ケアマネジャーや相談支援専門員などとも連携して、万が一への対応を想定してほしい。

 高齢化が急速に進み、緊急時に思うように動けない人は増えていく。若者でも病気や事故で障害を抱えることは十分あり得る。

 兵庫障害者連絡協議会の井上義治事務局長は「災害弱者の問題は、国民一人一人のこととして捉えるべきだ」と話す。災害弱者を守る対策を加速させる必要がある。

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