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 米国と中国が貿易協議の合意文書に署名した。2018年7月以来、大国同士が制裁関税を発動し合う争いはひとまず休戦状態に入った。

 中国が米国製品の輸入を2年で2千億ドル(約22兆円)増やすと保証した。現状の5割増である。代わりに米国は中国への制裁関税のうち1200億ドル分について、15%の関税率を半分の7・5%に引き下げる。

 米国が中国に是正を求めた知的財産権の保護や技術移転についても一定の着地点を見いだした。合意を守れているか検証する枠組みも設置を決めた。事態を悪化させないため、両国は合意を順守すべきだ。

 ただ、この合意は、あくまで「第1段階」である。

 11月の大統領選再選に向け、トランプ大統領は成果を急いだ。習近平国家主席は、制裁関税による経済の急減速を回避せねばならなかった。双方の目先の利害が一致した結果にすぎない。

 先端技術の覇権争いや人権問題など、米中間には大きな対立が横たわる。貿易分野の火種は残ったままであり、大国の対立激化につながる可能性もある。楽観は禁物だ。

 中国への制裁関税はまだ3700億ドル分も残っている。米国は「第2段階」の合意まで高関税を維持する姿勢だ。残る課題の解決に向け、圧力をかけ続ける狙いがある。

 第2段階では、ハイテク分野に対する手厚い支援をはじめとする産業補助金や国有企業の優遇など、「国家資本主義」とも称される中国経済の構造改革が焦点となる。市場をゆがめるとして、日本や欧州連合(EU)も批判を強めている。

 中国政府にとっては、いずれも体制の根幹に関わるだけに、米国が満足する回答が出るとは考えにくい。交渉は難航を極めそうだ。

 トランプ氏は、大統領選をにらみ早期の協議再開を唱えている。一方の中国は、長期戦も辞さない構えを示す。トランプ氏が再選を果たすかを見極める戦略だろう。

 懸念するのは、結果を急ぐトランプ氏が業を煮やして強硬姿勢に転じる展開である。中国も反発を強め、関税競争が再燃しかねない。

 構造問題の改革が遠のくばかりでなく、世界経済にも悪影響が及ぶ。

 米国は17年にEUとも貿易協議を始めたが目立った進展はなく、トランプ氏はEUからの輸入自動車に高関税を課す意向を示している。日本との貿易協定協議でも、日本車の追加関税をちらつかせた。

 自らの利益を最優先し、公正な貿易ルールに背くことも辞さない。そうした手法が横行すればいずれ自国にも影響が及ぶことを、中国だけでなく米国も省みなければならない。

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