社説

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 兵庫に瀬戸内海の春を告げるイカナゴのシンコ(稚魚)漁が29日に解禁される。県立水産技術センターは4年連続の不漁を予測している。

 例年、試験操業などの情報を基に、播磨灘と大阪湾の漁業者が自主的に解禁し、1カ月余り漁獲してきた。しかし、近年は極端な不漁で漁期を短縮している。昨年の大阪湾は3日間と過去最短となった。

 イカナゴは兵庫の消費者にとってもかけがえのない魚だ。また、ほかの大きな魚たちが餌とする、海の食物連鎖の底辺を支える魚でもある。その減少は近年の瀬戸内海の漁業不振にもつながっている。

 資源管理の厳格化とともに、海をめぐる環境変化と不漁について構造的な原因の解明を急ぎ、再生への取り組みを進めなければならない。

 イカナゴなど水産資源の減少については、プランクトンに必要な栄養の不足を主な要因とする調査結果を同センターがまとめている。高度経済成長期に多発した赤潮の原因となった生活排水や工場排水の浄化によるところが大きい。海の貧栄養化をもたらし、貝や海藻の減少との関連も指摘されている。

 県議会では昨年10月、栄養素である窒素やリンの海中濃度を高めるための改正条例を成立させた。やせた瀬戸内海の再生の第一歩といえる。

 多くの生き物がすむ「豊かな海」を復活させるには、まず森や海の生態系の変化を総合的に捉える必要がある。森は、微生物のすみかとなる腐葉土から河川や地下水を通して、海にミネラルなどの栄養を供給する源となってきたからだ。

 だが、近年は森の荒廃で腐葉土層が失われ、雨は土に浸透せずに川から海へと直接流れ込んでしまう。こうした地域環境の異変への理解とともに、森の手入れを進めるための木材の燃料利用や用途拡大も重要な課題となる。

 目を向けるべきもう一つの環境異変は農薬による生物の減少だ。島根・宍道湖のウナギやワカサギの不漁はネオニコチノイド系農薬で餌となる水生生物が激減したためではないかとの研究報告がある。たばこのニコチンに似た物質が主成分で、生き物の神経の働きを破壊する。

 グリホサートを主成分とする除草剤は、生物の栄養素摂取を妨げるとする研究が報告されている。こうした農薬は昆虫や魚類だけでなく人にも悪影響があるとの懸念から海外では禁止される流れが強まっている。ところが日本では逆に規制緩和され、量販店で大量販売されている。

 身近な生き物たちの異変を自然の警鐘と受け止め、海辺の開発や地球温暖化の影響も検証しながら対策の見直しを進めるべきだ。

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