社説

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 ハンセン病患者とされた男性を非公開の特別法廷で審理した裁判所の措置を「憲法違反」とする判決が、熊本地裁で言い渡された。

 最高裁は4年前に調査報告を基に「偏見や差別を助長し違法だった」と謝罪したが、違憲性には言及していなかった。明確に違憲と断じた司法判断は初めてだ。

 最高裁の問題認識の甘さを地裁判決が浮き彫りにした。裁判所による人権侵害に猛省を迫る判決だ。司法界は重く受けとめねばならない。

 特別法廷は戦後、隔離先の療養所などで1970年代まで95件開かれた。最高裁は60年以降の27件についてのみ「差別的な取り扱いの疑いが強い」としたが、地裁はそれ以前の事例も違法性と違憲性を指摘した。

 そもそも特別法廷の設置は、裁判所法に基づいて最高裁事務総局が判断していた。科学的知見などを検討せず「定型的な運用」を繰り返した経緯は、最高裁も認めている。

 自らの責任を明らかにし、同じ過ちを繰り返さないためにも、調査と検証をやり直すべきである。

 今回の判決は、ハンセン病療養所への入所を勧告された男性が殺人罪に問われた「菊池事件」を巡る国家賠償訴訟で示された。

 男性は52年、熊本県内の元村職員を殺害したとして逮捕、起訴され、特別法廷で裁かれた。無罪を訴えたが、死刑が確定し、再審請求は3度退けられ刑が執行された。

 凶器とされた短刀に血痕が付いていなかったなど、有罪判決には多くの疑問点が浮上した。だが、厳しい差別の中でさらなる再審請求に遺族の同意が得られず、元患者6人が国に賠償を求める訴訟を起こした。

 「検察が再審請求をしないのは違法だ」との主張である。

 判決は、特別法廷を「ハンセン病を理由にした不合理な差別」として、人格権を保障する憲法13条や、法の下の平等を定めた14条に反すると断じた。憲法がうたう裁判公開の原則にも違反したと認定した。

 ただ、再審を申し立てなかった検察の対応については「刑事裁判の事実認定に影響を及ぼす違反とはいえず、再審理由には当たらない」として原告らの訴えを退けた。

 この点では、判決に大いに疑問が残る。特別法廷が違憲であれば、そこで出された判決の正当性も問い直すべきだろう。公訴権を行使する検察が再審を請求するのが、「法の正義」を全うする道ではないか。

 ハンセン病の元患者らに対する偏見は今も根強いものがある。今回の地裁判決が示した真摯(しんし)な反省を、司法のみならず、差別の解消と啓発に取り組む自治体など、全ての機関が共有しなければならない。

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