新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、感染の有無を調べるPCR検査の拡充が欠かせない。医療崩壊の危機にも直面する中、態勢強化が急がれる。
政府は1日2万件の検査能力を目標に掲げ、その約7割まで可能になってきた。しかし、実際の検査件数は、増加傾向にあるものの、多くても8千件台にとどまる。
どこが目詰まりを起こしているのか徹底的に洗い出し、早急に改善せねばならない。
日本は当初、検査を絞り込む一方で、感染経路をたどり、濃厚接触者を重点的に検査するクラスター(感染者集団)対策に注力してきた。多くの感染者が確認されてベッド数が不足し、医療崩壊につながるのを回避するためだ。この方法が一定の効果を上げたとの見方もある。
だが3月下旬以降、感染者数が大きく増えるに従って、経路不明の感染者も急増し、従来方式の限界が見えてきた。
この1カ月ほどで、自宅や路上で倒れて死亡した後、感染が分かったケースが兵庫など5都県で計15件確認された。自宅で療養していた軽症者の容体が急変し、亡くなる例も出ている。発熱などがあっても検査を断られたり、感染の疑いがあるとして救急搬送患者が受け入れ拒否されたりする事例も相次いでいる。
救える命を守るためにもハードルを下げ、大量検査に早急にかじを切るべきだ。併せて、感染者を収容するための病床や宿泊施設の確保も進めていかねばならない。
参考になるのが世界的に評価が高い韓国の取り組みである。車に乗ったまま検査を受ける「ドライブスルー方式」をいち早く始めた。ボックスを設置し、手を伸ばして検体を採取する「ウオークスルー方式」も導入している。
「攻めの検査」を進めた結果、総数は日本の数倍の約60万件に上る。当初感染者数が急増したものの抑え込みに成功し、現在では感染者数、死者数とも日本を下回っている。
大阪府や奈良県、千葉市、新潟市など、国内でもドライブスルー方式を導入する自治体が増えている。神奈川県横須賀市は先週から、ウオークスルー方式を始めた。作業の効率化と院内感染防止にもつながり、全国的な広がりを期待したい。
残念ながら、兵庫県内からはこうした動きが聞こえてこない。予断を許さない状況は変わっておらず、県や神戸市などは前向きに検討してもいいのではないか。
独自の取り組みを進める自治体に比べ、国の対応は遅く不十分だ。最前線の現場を財政面で支える仕組みづくりを進める必要がある。








