社説

  • 印刷

 検察官の定年延長を認める検察庁法改正案について政府、与党は今国会の成立を断念した。「不要不急」の法改正と認めたに等しい。

 新型コロナウイルス対策に全力を傾けねばならない時に、無用な与野党対立を生じさせ、国会を混乱させた安倍政権の責任は重い。

 検察幹部の人事に政治が介入する余地を許す法改正である。実現すれば検察の独立性は揺らぎ、検察捜査に対する国民の信頼も失いかねない。成立を先送りしただけでは解決しない問題をはらんでいる。重ねて求める。法案は撤回すべきだ。

 今回は野党だけでなく、普段は政治と距離を置く著名人や検察OBらも公然と反対の声を上げた。

 採決を強行すれば政権へのダメージが大きいとの判断だろう。安倍晋三首相は「国民の理解なくして前に進めていくことはできない」と述べた。世論が政権の暴走にブレーキをかけた意義は大きい。

 だが政府、与党は法案を取り下げず、今秋の臨時国会などで改めて審議するという。法案の問題点と国民の懸念を軽視し、時間がたてば関心も薄れると高をくくっているのではないか。政権がこの姿勢を改めない限り、国民の信頼は得られまい。

 改正案は国家公務員法の改正と一本化して国会に提出された。国家公務員の定年を65歳に引き上げるのに合わせ、検察官の定年も63歳から65歳に引き上げ、役職は63歳で外れる「役職定年制」を設ける。

 ここまでは高齢社会に対応した制度変更として一定の理解はできる。

 問題は、検察幹部が役職定年を過ぎても内閣や法相が認めれば留任できる特例を盛り込んだ点だ。

 検事総長をトップとする検察幹部の退任が年齢一律で決まる現在の仕組みは、政治介入を排除するとともに強大な検察権力の乱用を防ぐ意味でも厳格に適用されてきた。

 首相は「政治介入はあり得ない」と繰り返す。だが、その懸念を招いたのは、法改正に先行し、首相官邸と近い黒川弘務東京高検検事長を定年後も続投させた異例の閣議決定だったことを忘れてはならない。

 改正案の審議で政府側は、検察幹部の定年延長が必要になる事例を具体的に示すことができなかった。「おきて破り」の閣議決定を後付けの法改正で正当化しようとしたとの疑念は消えない。

 先行きの見通せないコロナ禍を乗り切るには、国民の政治への信頼がいつにも増して求められる。

 検察庁法は国家公務員法と切り離し、改正案を撤回した上で議論し直すべきだ。問題の発端となった黒川氏の定年延長も白紙に戻し、国民の疑念を解消する必要がある。

社説の最新
もっと見る

天気(7月13日)

  • 24℃
  • 21℃
  • 70%

  • 23℃
  • 19℃
  • 70%

  • 24℃
  • 22℃
  • 70%

  • 22℃
  • 20℃
  • 80%

お知らせ