社説

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 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が閉幕した。習近平指導部は軍拡堅持の姿勢を示し、香港に対してはかつてない強硬路線に打って出た。

 きのう決定した香港の統制強化を目的とする国家安全法制の導入は、この地に高度な自治を約束した「一国二制度」の自己否定にほかならない。暴挙であり、容認できない。

 しかも香港の議会を通さずに開幕直前に提起され、ほぼ密室で審議された。現地では「政府批判が罪に問われる」と懸念する市民の抗議活動が激化している。国際社会からの厳しい批判は当然だ。

 米国では昨年11月、香港の自治を支援する「香港人権・民主主義法」が成立した。米トランプ政権は今回の対応を巡り、中国に制裁を科す可能性があると表明している。

 中国からすれば、米国との覇権争いに負けるわけにはいかないということだろう。あえて挑発的な行動を取り、国内の求心力を高める狙いもあるとみられる。

 そうした姿勢が各国の中国脅威論を助長することを、当の中国は直視せねばならない。香港の国際金融センターとしての機能が損なわれれば、中国にも痛手となる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で開催が当初より2カ月半遅れた全人代は、異例ずくめだった。

 施政方針に当たる「政府活動報告」では、最重要視される経済成長率の目標提示が見送られた。李克強首相は「経済、貿易の不確実性が高く、予測困難な要因に直面している」と説明した。経済への打撃の大きさがうかがえる。

 インフラ投資や金融緩和、減税といった景気刺激策を打ち出したものの、コロナ禍の世界的な終息は見通せず、効果は未知数だ。

 一方、軍拡路線は変わらない。経済減速を受けて公共サービスなどの一般予算を削ったが、国防費は6・6%増の1兆2680億元(約19兆1700億円)を計上した。

 伸び率は鈍化したとはいえ、米国に次ぐ世界2位の規模だ。「軍民融合」で武器開発を進め、南シナ海、東シナ海への進出を加速している。軍事力を背景にした覇権主義は危うさを増しており、看過できない。

 米中関係は「新冷戦」といわれるほど悪化している。何かにつけて中国批判をエスカレートさせる米トランプ政権に問題はあるが、中国も大国としての冷静さが求められる。

 「感染症対策で各国との協力を強化し、世界経済の安定を促す。国際秩序を守り、平和を後押しする」と李首相は述べた。方向性に異論はない。問われているのは、実際の行動である。

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